研究課題/領域番号 |
16K21528
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研究機関 | 京都外国語大学 |
研究代表者 |
伊多波 宗周 京都外国語大学, 外国語学部, 講師 (80608688)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 哲学 / 倫理学 / 社会哲学 / 交換的正義 / 応報 / 秩序 / 相互性 / 社会性 |
研究実績の概要 |
当該年度の研究成果は、発表済みのものについては2点である。まず、京都外国語大学・京都外国語短期大学『研究論叢』に掲載された査読付論文「交換的正義概念の系譜におけるアリストテレスと問いの源泉」、次に国内研究者による学術出版『哲学すること』に分担執筆した「相互性・社会性と秩序変化」である。 査読付論文「交換的正義概念の系譜におけるアリストテレスと問いの源泉」については、当該年度の研究推進方策において示した、研究課題の下位分類2a)「アリストテレスからスミスにいたる交換的正義概念の系譜の整理」の研究成果の一部として執筆し、掲載されたものである。同論文において、アリストテレス『ニコマコス倫理学』において、「部分的正義」として配分的/矯正的正義についで、応報の正義(交換的正義)について述べられたことの意義と、その位置付けについて、中世以降に「部分的正義」が配分的/交換的に二分化されることを視野に入れて明らかにした。 分担執筆「相互性・社会性と秩序変化」は、研究課題の下位分類3)「交換的正義概念の系譜と現代ポスト・アナキズム政治哲学との批判的接合作業」において必要な哲学的議論を行ったものである。日本の哲学者松永澄夫の社会哲学の議論を踏まえ、二者間関係(相互性)と全体社会を想定した関係(社会性)の関係および、前者が後者へと結びつく理路について明らかにした。これは、配分的/交換的正義概念がもつ垂直性/水平性と、全体-部分関係/部分-部分関係という二つの含意の関係を事柄に即して考察したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究推進方策は、次のとおりであった。まず、研究課題の下位分類1a)「英語圏ポスト・アナキズム政治哲学の全体像の解明」について、論文を執筆すること。これについては、当該年度内には完成しなかった。ただし、最重要の研究者であるSaul Newmanの関連書籍を読み終えるなど、着実に研究は進行しており、研究最終年度にあたる次年度に論文執筆する目処が立った。 次に、研究課題の下位分類2a)「アリストテレスからスミスにいたる交換的正義概念の系譜の整理」の研究成果のはじめの3分の1を成果として論文執筆し、次の3分の1の研究を終えること。これについては、上述「交換的正義概念の系譜におけるアリストテレスと問いの源泉」を執筆した上、次の3分の1について順調に研究を進めた。 また、研究課題の下位分類2b)「スミスからプルードンへの影響関係の解明」に関連する論文を学会誌に論文を投稿し、掲載が決定している(次年度の成果に含める)。そして、研究課題の下位分類3)「交換的正義概念の系譜と現代ポスト・アナキズム政治哲学との批判的接合作業」については、上述「相互性・社会性と秩序変化」を執筆し、上述1a)および、研究課題の下位分類1b)「ポスト・アナキズム政治哲学への批判の論理解明とポスト・アナキズムの問題点の解明」の最終年度における研究成果とあわせて結論を得るための準備が完了した。 以上のことから、おおむね順調であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、これまでのところ、おおむね研究計画通りに進行しているので、最終年度にあたる次年度についても、研究計画に大きく変更することなく、着実に研究を進める。 まず、研究課題の下位分類1a)「英語圏ポスト・アナキズム政治哲学の全体像の解明」について、1b)「ポスト・アナキズム政治哲学への批判の論理解明とポスト・アナキズムの問題点の解明」についての論点をも網羅し、論文を執筆する。この作業を夏季までに終えて、学会誌に投稿する。 次に、研究課題の下位分類2a)「アリストテレスからスミスにいたる交換的正義概念の系譜の整理」の残り3分の2の成果について、秋季までに論文を執筆し、大学紀要に投稿する。 研究課題の下位分類2b)「スミスからプルードンへの影響関係の解明」については、研究初年度および当該年度において研究は終えている。したがって、残る作業は、上述の諸成果を踏まえて、研究課題の下位分類3)「交換的正義概念の系譜と現代ポスト・アナキズム政治哲学との批判的接合作業」を行うことに限られる。これを次年度の冬季に行い、最終成果として学会誌または大学紀要に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
生じた次年度使用額は61円と少額であり、誤差の範囲内である。
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