生活習慣病等の疾病や要介護状態の予防、健康維持・増進に影響を与える要因のうち、身体活動は重要な要因である.本研究は身体活動に関するわが国独自のエビデンス構築に向け,双生児研究法と国際比較研究から目指すことを目的とした. まずは研究実施計画に従い,平成28年度は国内の身体活動に関するデータ収集の準備を進めた.海外の研究者への情報収集から国際比較が可能な調査票を作成し,大阪大学ツインリサーチセンター登録者2336名に対する調査の郵送・回収を終えた.平成29年度では,データクリーニングおよび分析を進めた.その結果,わが国で初めて双生児研究法を用いた,成人の身体活動量の遺伝率を算出し,歩行の活動量と,座位行動時間に遺伝率が認められ,環境要因がより強いことを双生児研究学会で報告した.初年度から継続して国際共同研究につなげるために,双生児研究で先進的なフィンランドの研究者への相談や,在日外国人、在留日本人調査研究に向けて,関係があるフランス・タイ・インドネシアの大学研究者,日本大使館との情報交換、協力依頼を行ったが,両国間での制度や仕組みの違いがあり,特に倫理審査やデータ共有が課題として残った.平成30年度では,分析結果が国際リハビリテーション医学会に採択され,報告した.また,歩行の活動量について遺伝率が認められることから,その関連要因の検討のため,成人双生児を対象とした身体機能測定を新たに開始し,約80名のデータ収集を行い,ペア間で筋力や歩行速度に類似性が高い結果が得られた.国際共同研究の基盤形成のために継続的に研究者との会議を行い,在フランス日本人会への研究依頼とインタビューを行うことができた.さらに、すでに双生児研究で他国と国際共同研究を実施しているのSemmelweis universityと国際共同研究を進めることが決まり,両国のデータ共有を終えることができたところである.
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