研究課題/領域番号 |
16K21532
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
橋川 成美 (芳原成美) 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (30511159)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 恐怖記憶 / γアミノ酪酸 / CGRP |
研究実績の概要 |
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は強力な血管弛緩作用をもつ神経 伝達物質であり、近年では中枢神経系に関する報告が増加してきている。しかしながら、CGRP と恐怖記憶行動における報告はまだない。 記憶は、学習→獲得→保持→想起により形成されることが明らかとなっている。恐怖記憶を形成するには、 記憶を思い出し、恐怖を感じることで、脳内に記憶が固定化(貯蔵)される。その後、記憶の想起により恐怖を感じる必要がなくなれば、恐怖感が薄れる。これを「恐怖記憶消去」という。 この流れを条件付け文脈学習試験においてC57BL6/J雄性マウスを用いて実験を行なった。その結果、恐怖記憶を与えた1週間後に、記憶を想起させる前にCGRPを脳室内投与しても恐怖記憶の保持に変化は見られなかった。一方、恐怖記憶を想起させた直後にCGRPを脳室内投与すると、恐怖記憶消去作用が有意に抑制されていた。つまり、恐怖記憶を長く覚えていた。この効果はCGRPを投与してさらに1週間経っても持続が見られ、生理食塩水投与群と比べて有意な差が見られた。 恐怖記憶消去抑制作用のメカニズムを検討した結果、Γアミノ酪酸作動性神経受容体阻害薬であるpicrotoxin投与によりCGRPの作用の抑制が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究でCGRPが恐怖記憶に関与しているという結果が得られたこと、さらにCGRPがどのように恐怖記憶に関与しているかについて、GABA神経系が関与している可能性が明らかとなったことが理由である。 しかし、これまでに恐怖記憶を与えた直後にCGRPを脳室内投与すると、むしろすくみ行動の有意な低下が見られた。つまりCGRP投与により恐怖記憶を覚えていなくなったという逆の結果が得られていた。この矛盾について、全く違った神経系に投与時期によって異なる作用を示すのかどうか検討する必要があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
CGRPを投与する時期によって、異なる結果が得られたことから、今後は恐怖記憶を与えた直後にCGRPを脳室内投与した時の生体内反応のメカニズムについて詳細な検討をしていく予定である。
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