研究課題/領域番号 |
16K21533
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
黒瀬 浩史 川崎医科大学, 医学部, 助教 (30551139)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Treg / PD-L1 / PD-1 / TIM-3 / 腫瘍浸潤リンパ球 / 非小細胞肺癌 |
研究実績の概要 |
本研究では、肺癌微小環境の炎症の有無と局所浸潤Tregの関与を明らかにするため、肺癌手術、気管支鏡検体を用い、腫瘍局所浸潤リンパ球、Treg分画、および抑制性分子PD-1、TIM-3をフローサイトメトリー法で解析し、さらに腫瘍細胞のPD-L1を免疫染色し、これら分子とPD-L1発現との関連性を検討した。気管支鏡検査症例14例における解析では、末梢血と比較し腫瘍局所ではCD4に比べCD8優位であり、CD8上の抑制性分子PD-1+TIM-3+、およびPD-1+TIM-3-分画が腫瘍局所で増加していた。これらの結果は手術症例12例においても同様の傾向であった。次にPD-L1(SP142)による免疫染色を行った。気管支鏡検査症例14例のうち、PD-L1 5%未満発現症例は7例(50%)、5%以上発現症例は7例(50%)であり、50%以上発現症例は4例(29%)であった。PD-L1 5%未満(低発現群)および5%以上(高発現群)の症例を比較検討したところ、高発現群では腫瘍浸潤CD3+T細胞が多い傾向にあったが、一方で活性化Tregの割合も高く、CD4+T細胞上にPD-1+TIM-3+が高発現していた。またPD-L1低発現群では、腫瘍浸潤Tリンパ球は少ない傾向にあったが、一部の症例ではCD8/Treg比が低く、Treg優位な腫瘍環境を示す症例が存在し、それらの症例ではCD4+T細胞上にPD-1+TIM-3+が高発現していた。 肺癌においてPD-L1低発現群では腫瘍浸潤リンパ球が少なく、免疫抗体療法不応性となる可能性が高いが、一部の症例でTreg優位な症例が存在し、Treg除去が有効となる可能性がある。また、PD-L1高発現群では腫瘍浸潤リンパ球が多い傾向にあったが、活性化Tregも誘導されており、抗PD-1抗体療法にTreg除去を組み合わせることで治療効果を増強させる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
早期肺癌症例として手術検体を用い、一方進行期肺癌症例として気管支鏡検査症例を解析した。当初手術症例を優先的に収集し解析予定としていたが、気管支鏡検査症例も並行して検体を収集することでより多くの症例を集積するよう努めている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き症例を集積し、早期、進行期肺癌症例を解析する。また、過去の肺癌症例についても免疫染色法を用いて免疫チェックポイント分子と予後について解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用内容については予定通りである。
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次年度使用額の使用計画 |
予定通り使用できており、繰り越し分についてはフローサイトメトリー用抗体の購入費用に充てる。
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