研究課題/領域番号 |
16K21534
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研究機関 | 就実大学 |
研究代表者 |
川上 賀代子 就実大学, 薬学部, 助教 (00505935)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 食品 / 生理活性 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
糖尿病は、血糖値を低下させるインスリンの量または作用不足により血糖値が上がる病態であり、その予防や改善には、インスリンの分泌を適切にコントロールすることが重要である。インスリン分泌にはインクレチンというホルモンが大きく寄与しており、このインクレチンはDipeptidyl Peptidase-Ⅳ(DPP-4)によって速やかに分解されるため、DPP-4を阻害することによりインスリンのコントロールが可能となる。一方で、日本では食生活の欧米化により、1960年代中頃から米の生産量が消費量を上回るようになってきており、米の高付加価値化と有効利用が急務である。このため本研究では、米由来のタンパクや酵素分解ペプチドの血糖改善作用について、DPP-4阻害作用を指標として評価を行う。最終的には、米由来の機能性食品素材の開発を目指している。 米および酒粕は市販品を使用し、米ぬかタンパクは、脱脂ぬかを材料に、アルカリ抽出および酸沈殿にて調製した。米由来タンパク(米、酒粕、米ぬか)を、市販酵素であるウマミザイムG、デナチームAPあるいはビオプラーゼSPによって消化し、凍結乾燥することによって、各種米由来タンパク加水分解物を得た。また、DPP-4は、ヒト腎由来cDNAをテンプレートに、PCRにて得られたDNAを菌体外発現用ベクター(pPICZα)に組み込み、メタノール資化性酵母(Pichia pastoris KM71H)を宿主に発現を行い、その培養上清を透析して用いた。米タンパクおよび酒粕/デナチーム加水分解物、米ぬか/ウマミザイムGおよびビオプラーゼSP消化ペプチドのDPP-4活性に対するIC50 (mg/mL)は、それぞれ1.5±0.1、27.6±5.8、2.3±0.1、26.4±2.3であり、米タンパク/デナチーム加水分解物が最も高い阻害活性を示した。米タンパク/デナチーム加水分解物を、ゲルろ過カラム(Superdex peptide)を用いて分析した結果、その最大分子量は、約150であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、下記の内容で実験を行い研究は概ね順調に進展している。 1.米タンパク抽出物、酵素分解物の調製 米および酒粕は市販品を使用し、米ぬかタンパクは、脱脂ぬかを材料に、アルカリ抽出および酸沈殿にて調製した。米由来タンパク(米、酒粕、米ぬか)を、市販酵素であるウマミザイムG、デナチームAPあるいはビオプラーゼSPによって消化し、凍結乾燥することによって、各種米由来タンパク加水分解物を得た。 2.DPP-4阻害活性の評価(in vitro) ヒトDPP-4リコンビナントをメタノール資化性酵母(Pichia pastris KM71H)に発現させ、硫安分画、精製した。DPP-4阻害試験は、Ala-Pro-pNAを基質として測定した。1で調製した米タンパク抽出物や酵素分解ペプチドを添加してIC50を算出した。米タンパクおよび酒粕/デナチーム加水分解物、米ぬか/ウマミザイムGおよびビオプラーゼSP消化ペプチドのDPP-4活性に対するIC50 (mg/mL)は、それぞれ1.5±0.1、27.6±5.8、2.3±0.1、26.4±2.3であり、米タンパク/デナチーム加水分解物が最も高い阻害活性を示した。米タンパク/デナチーム加水分解物を、ゲルろ過カラム(Superdex peptide)を用いて分析した結果、その最大分子量は、約150であった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究から、米タンパク/デナチーム加水分解物が最も高いDPP-4阻害活性があることが明らかとなった。次年度は活性成分の同定と動物実験により血糖値上昇抑制作用の評価を行う。 1.活性成分の同定、構造解析 DPP-4阻害活性の認められた米タンパク/デナチーム加水分解物を電気泳動、ゲルろ過カラムや透析膜によって分画し、活性成分の同定を行う。単一成分まで分画・精製できたら、NMRやMSおよびプロテイン・シークエンサーなどの各種機器分析を行い、構造解析する。分画、精製を行うことにより、活性がみられなくなることがあるため、分画したサンプルはDPP-4阻害活性を順次評価する。 2.血糖値上昇抑制作用の評価(in vivo) 米タンパク/デナチーム加水分解物を一晩絶食させたSprague-Dawlyラットに経口投与し、糖負荷して経時的に採血する。血清中のグルコースやインスリン、活性型GLP-1をELISA法により測定し、血糖値上昇抑制作用を評価する。また、血清中のDPP-4活性を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に行ったDPP-4阻害試験において、順調に米タンパク加水分解物のスクリーニングを行うことができ、DPP-4の調製量が予想よりも少ない量で済んだため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度行う成分同定で当初よりもDPP-4の調製が必要であると見込まれるため、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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