研究課題/領域番号 |
16K21535
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研究機関 | 吉備国際大学 |
研究代表者 |
京極 真 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (50541611)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 多職種連携 / 信念対立解明アプローチ |
研究実績の概要 |
本年度は、信念対立解明アプローチ(Dissolution Approach for Belief conflict、DAB)を基盤に多職種連携で生じる意見の対立を解き明かす技術の習得を促す教育プログラムのコンテンツを検討した。信念対立解明アプローチは様々な意見が生じる理由を洞察し、共通了解可能な状態を形成するための哲学的実践論である。医療保健福祉に携わる専門職は、意見の対立を克服するために信念対立解明アプローチの視点を学習する必要がある。 そこで本年度は、信念対立解明アプローチを専門にする医療保健福祉領域の専門職らとともに討議を重ねながら教育プログラムを検討し、それを実際の専門職を対象に試行しながら内容を精査していった。探索的に試行実施を重ねた結果として、教材には、多職種連携の有効性を示す研究結果(主にメタ分析とシステマティックレビュー)を示す、多職種連携と意見の対立の関係に関する研究結果を示す、信念対立解明アプローチの基本方法を学習する機会を作る、事例で実践を学ぶ機会を作る、意見の対立の理由と共通了解可能な条件の洞察を促進する機会を提供する、などを含むとよい可能性が示唆された。またその内容は可能な限り平易なものにし、段階的に難易度を高める工夫が必要であるという示唆も得られた。 ただし課題として、教師役の信念対立解明アプローチの理解度が教材の運用に影響を与える可能性があることが示唆された。例えば、参加者が体験した意見の対立に対する助言を求められたときに、信念対立解明アプローチの理解が浅いと個人的体験による助言にとどまってしまい、汎用可能な技術を学習する機会を提供しがたいことがあった。そのため、教師役が誰であってもある程度は同質の教育効果を確保するために、教材はマニュアルの整備に加えて、eラーニングの導入などの工夫が必要になってくる可能性があることも予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
教育プログラムの作成と試行を繰り返し、教材に必要な内容を精査していった。臨床現場の信念対立事例も収集し、どのような仮想事例を用意すれば教育から臨床につなげることができる教材になるかを検討することもできた。 例えば、権威者との信念対立、向上心のない同僚との信念対立、他の資格をもつ職種との信念対立、クレームの多い患者との信念対立などは、多職種連携で意見の対立が生じるきっかけになっていることが多かった。また意見の対立がきっかけになって感情的になった場合に、どう対応したらよいかということも問題になりがちであった。 最終的に、教育プログラムの教材としてどのような内容を含むかはさらなる検討が必要であるものの、多職種連携で生じやすい意見の対立を仮想事例として教材に含めることにはかわりない。以上、教育プログラムの教材に含む内容が探索的に同定できたためおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、研究結果に準じて、教育プログラムの教材とそれを実装するツールを再検討中である。特に、教える人によって、教育効果に差が生じないように、教材運用上で工夫が必要であると考えている。例えば、信念対立解明アプローチの開発者が直に教育したときと、そうでない者が教育したときで教育効果に差が出ないような仕組みを作るという課題がある。現在、整備しつつあるワークショップ、ならびに信念対立解明ツールによってその課題を克服できる可能性を検討するとともに、ソーシャルネットワーキングサービスを用いた学習やeラーニングなどのインターネット上の仕組みを導入することも検討が必要である。今後の研究を推進するために、信念対立解明アプローチに基づく教育プログラムのパイロット実践を行い、それにさらなる改良を加えていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究はおおむね順調に経過したものの、本年度、購入予定だった物品購入が翌年度に繰り越すことになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
必要な物品を購入の上、研究を遂行していく。
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