本研究の目的は、多職種連携で生じる意見の対立に対応する実践のための知識と技術を学習するための教育プログラムを開発することだった。多職種連携には役割、教育、価値の異なる人々のコミュニケーションが欠かせない。そのため、個人内、個人間、組織内、組織間などのさまざまなフェーズで意見の対立が生じ、その結果としてストレス、抑うつ気分など様々な問題が起こりやすい。多職種連携における意見の対立に対応する手法として、信念対立解明アプローチをはじめとする様々な方法論が活用されている。本研究では、研究者が開発した信念対立解明アプローチを基盤にした教育プログラムの構成と洗練を重ねて、その有用性を検討した。 特に本年度は、前年度までに構築した信念対立解明アプローチに基づく教育プログラムの実行可能性を高めるために、動画教材による学習プロセスを構成する機能を実装し、学習者の学習機会の促進と教育者の学習支援の負担軽減を図ることができるよう構成した。さらに、それに基づいて実運用のためのマニュアルを改訂し、意見の対立への対応を学ぶための学習プロセスを構成するの改訂を行った。それによって、学習者はテキストによる学習、課題遂行による体験学習と教育者からのフィードバックによる理解促進に加えて、動画を通した学習を行えるようになった。意見の対立は個体差があり、複雑な問題であることから、学習者、教育者によって学習と学習支援にバラツキが生じやすい。教育プログラムに動画教材を実装することによって、読む、聞く、実施する、内省するなどの多角的な学習機会を提供し、学習者にとっても、教育者にとってもわかりやすく学習を促進できるかたちに洗練できた。 なお、課題としては、教育プログラムのさらなる有用性の検討と汎用性の拡張、アクセシビリティの改善、多職種連携教育への一般化が残されたため、今後インターフェースを広げて検討していきたい。
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