研究課題/領域番号 |
16K21539
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研究機関 | 比治山大学 |
研究代表者 |
川人 潤子 比治山大学, 健康栄養学部, 准教授 (70636092)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 若年労働者 / 自己複雑性 / 抑うつ / プレゼンティズム / ワークエンゲイジメント |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,若年労働者を対象とした自己複雑性とメンタルヘルスの関連について明らかにすることである。平成29年度は20‐29歳の300名の若年労働者を対象とした調査結果から,自己複雑性と抑うつ,プレゼンティズムならびにワークエンゲイジメントとの関連を検討した。 共分散構造分析の結果,肯定的自己複雑性に関しては,ワーク・エンゲイジメントへのパスに有意な正の関連が認められ,さらに抑うつへのパスには有意な負の関連が認められた。しかし,肯定的自己複雑性とプレゼンティズムには有意な関係は認められなかった。また,否定的自己複雑性に関しては,プレゼンティズムおよび抑うつへのパスに有意な負の関連が認められた。さらに,否定的自己複雑性からワーク・エンゲイジメントへのパスには,有意な負の関連が認められた。 日本人の中高年の労働者を対象とした川人(2016)と異なり,若年労働者においては,肯定的自己複雑性の高さが抑うつの低さと関連し,肯定的自己複雑性がワーク・エンゲイジメントを促進することを示した。つまり,肯定的な自己認知が多様であれば,プレゼンティズムへの影響は小さいものの,抑うつの重篤化を抑制する可能性があり,仕事への熱意等を高める可能性が示された。この結果は,川人・大塚(2011)の大学生を対象とした調査結果においても同様の傾向が認められており,若年層のメンタルヘルスの改善には,自己を多方面から肯定的に捉えなおす作業が重要になると考えられる。 一方で,川人(2016)と同様に,若年層においても否定的自己複雑性の高さが抑うつの高さに関係する傾向が認められた。他方,若年労働者の特徴として,否定的自己複雑性の高さがプレゼンティズムを高める一方で,ワーク・エンゲイジメントを低める傾向を示した。否定的な自己認知が多様であれば,勤務中に心身の不調を感じやすい傾向があり,仕事への熱意等を感じ辛い,ということが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は,300名の若年労働者を対象に,自己複雑性と抑うつ,プレゼンティズム,ならびにワークエンゲイジメントとの関連を明らかにすることができた。 しかし,対象者を増やしての調査が遅れたため,調査結果を踏まえたメンタルヘルス改善プログラムの開発も併せて遅延した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,調査結果を踏まえたメンタルヘルス改善プログラムの実施ならびに効果検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
メンタルヘルス改善プログラムの開発および実施が遅れているため,平成29年度に予定額を使用できなかった。そのため,平成30年度にプログラムの実施運営費として使用する。
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