本研究の目的は、オンラインメディアにおけるスポーツのメディア言説の特徴を明らかにし、またスポーツのメディア言説が、マス・メディアからオンラインメディアへどのように変化していくのかについて明らかにすることであった。マス・メディアの分析対象は全国紙(読売新聞、朝日新聞、および毎日新聞)とし、オンラインメディアの分析対象はSportsnavi plus(以下、ブログ)とした。 ブログの投稿者は、新聞におけるスポーツの言説について意味を付与することで再言説化していた。ただし、新聞記事で数多く取り上げられた内容が、必ずしもブログ上でも取り上げられる状況になってはいなかった。それは、マス・メディアにおけるメディア・バリューが、投稿者にとってのメディア・バリューとは必ずしも一致しないことが理由としてあげられる。 また、例えば2011年の朝日新聞の記事には、震災の影響によって中止を余儀なくされた行事を取り上げられる一方で、スポーツなどの開催自粛は社会の活力を失わせるとし、大会開催を復興への前向きなイベントとして報道されていた。ブログにおいては、大会日程が進行するにしたがって、被災地である東北勢優勝の物語が意識されるようになっていた。つまり、本来、震災後半年にも満たない状況下でスポーツの大会など開催できるはずもないという現実と、スポーツを通じた夢や希望、また優勝への期待が結びつけられるよう意味付けの変化が生じていたことが示唆された。
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