本年度は、有酸素性運動が神経疾患の発症に与える影響を調べるために、多発性硬化症(MS)モデルマウスに2週間の有酸素性運動を行った。MSモデルマウスは、クプリゾン(CPZ)誘導により脳内ミエリンが減少する脱髄モデルマウスである。有酸素性運動はマウス用ドレッドミルを用い、1日10 m /分を60分、2週間行った。ローターロッドによる運動能力試験の後、マウス脳の病理切片を作製し、ミエリンの染色を行って脱髄レベルを評価した。 GPR120KOマウス、HF、TF飼育WTマウスは5週齢でWT通常食マウスより体重の増加が見られた。16週齢においては、HF、TF飼育WTマウスはGPR120KOマウスに比べさらなる体重の増加が見られた。ローターロッドによる運動継続可能時間はGPR120KOマウス、HF、TF飼育WTマウスは、WT通常食マウスに比べ低下が見られた。Y字迷路による正答率はGPR120KO、TF飼育WTマウスにおいて低下が見られた。HF飼育WTマウスの正答率は通常食WTマウスと同程度であった。 DHA生理活性を発揮できないGPR120KOマウスは記憶学習能力の低下が明らかとなった。またHFはわずかながらGPR120アゴニストであるω-3脂肪酸を含むため、WT+HFマウスには記憶学習能は異常が見られなかったと考えられた。TF はGPR120のアゴニストを含まない高脂肪食であるため、WT+THマウスは記憶学習能の低下が見られた。魚介類に多く含まれるDHAが正常な脳神経機能に重要であることが示された。運動継続可能時間についてはDHA生理活性による有意な差は見られなかった。
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