研究課題/領域番号 |
16K21551
|
研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
下戸 健 福岡工業大学, 情報工学部, 准教授 (40412457)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 再生医学 / 医用ロボット / 細胞構造体 / スフェロイド / 細胞凝集塊 |
研究実績の概要 |
Cell Processing Robotの機能を高度化し,細胞数を自動調整して目的の大きさの細胞凝集塊(スフェロイド)を生成できるシステムを開発するのが本研究の目的である.これに関し,得られる細胞凝集塊について再生医療への応用を検討するために,研究計画に従い以下の1項目について遂行した. 細胞凝集塊形成システムの細胞播種用モジュールの開発を行った.細胞懸濁液の調整方法の入力は,セルカウントした値と作製する細胞凝集塊の細胞数とした.細胞の種類,個体間,継代数等で細胞凝集塊の大きさは異なる.そのため,細胞凝集塊の細胞数は技術技能員の経験で調整されるため,任意の細胞数を入力できるようにした.細胞凝集塊の大きさを入力とした,データベースに基づくアルゴリズムにも応用することができるため,細胞のデータ数を蓄積した後にシステムを拡張させる.システムのモーションのプログラミングは,技術技能員のモーション,特に重要なピペッティング技術を参考にした.システムを用いて細胞凝集塊を作製した結果,細胞凝集塊の直径にばらつきが認められた.システムは作業効率を向上させるために,スカラーロボット第4関節先端に2×2チャンネルのピペットを取り付けている.これに合わせて,円筒の容器底にテーパ形状の冶具を作製している.1×8チャンネルのピペットを使用している技術技能員のモーションと異なっているため,システム専用リザーバーでは細胞懸濁液内の細胞が一箇所に沈殿し,分注する際の細胞数に差が生じたと考えられる.一方で,作製した細胞凝集塊の円形度は高い値を示した.これは,システムの攪拌動作や再現性のある作業時間などにより,細胞にダメージを与えずに細胞凝集塊を作製できたためだと考えられる.これらに関して,システム専用リザーバーに合わせたモーションに改善し,再現性があり目的の大きさの細胞凝集塊を得られるようにする.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は細胞凝集塊形成システムの細胞播種用モジュールの開発が目標である.研究計画では細胞数の調整方法の確立とモーションのプログラミングに分けられるが,後者の開発期間は平成30年度前半までであり,問題なく両者の開発を行えている.さらに,実際の細胞を扱うため細胞培養も行う必要があるが,本学に細胞培養環境を整備し,大きな問題もなく培養を行えている.これまでの研究成果は,日本機械学会や日本臨床バイオメカニクス学会で報告しており,研究の進捗状況は順調である.平成30年度においても更に研究を発展させていく予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
細胞凝集塊形成システムの細胞播種用モジュールについて,モーションを検討し再現性があり目的の大きさの細胞凝集塊を得られるようにする.さらに,目的に応じた細胞凝集塊の作製実験と評価を行っていく.その際,正常ウサギ間葉系幹細胞を用いて検証していく.細胞凝集塊の定量評価には,開発を行い自動化させたスフェロイド形態評価システムも用い,高い円形度を有し目的の大きさの細胞凝集塊が生成できているか確認を行う.細胞の生存率については,アッセイによる調査を予定しているが,細胞の密度が高いため,細胞凝集塊の内部を観察できない可能性がある.そのため,画像濃度分布を可視化できる機能を組込み,細胞分布の評価を検討している.これにより,細胞凝集塊形態特性の評価に繋げていく.
|