研究課題
(1)(a)ツメガエルBra2の抗体作成は失敗に終わり、ChIP-seq解析を行うことはできなかった。その一方で、ゲノム編集による内在転写因子へのエピトープタグの挿入を試み、予備実験ではネッタイツメガエル胚にCas9タンパク質をgRNAとともに顕微注入する方法を用いて、Bra1およびBra2のゲノム領域を効率的に切断することに成功した。(b)トランスジェニックレポーター解析によって、転写制御と転写後調節による遺伝子発現制御機構を明らかにするため、ツメガエルBra1およびBra2のエンハンサー配列と3'UTRを挿入したレポーターコンストラクトを作成した。(2)(a)ゼブラフィッシュNtlのChIP-seq解析は未達成である。(b)イモリ胚を用いた発現解析の結果、braとntlはほぼ同じ発現パターンを持つことが示された。また、メダカ胚を用いた発現解析も行ったところ、ゼブラフィッシュやポリプテルスと同様に、ntlが主に脊索で発現し、braは尾芽での発現が主であることを見出した。これらの結果は、braとntlの機能分化が肉鰭類では起こっておらず、条鰭類独自の現象であることを示唆している。(c)アフリカツメガエル胚アニマルキャップを用いた脊索誘導アッセイの結果、ツメガエルBra2はBra1に比べ同等かやや強い活性を示した。さらに、ゼブラフィッシュのBraパラログの活性も検討したところ、Ntl、Bra、Tbx19の順で強い活性を示した。これらの結果は、脊索における発現の強度と脊索誘導活性に相関があることを意味しており、機能分化の結果タンパク質機能にも変化が生じていることを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
イモリ、メダカを用いた発現解析で十分な結果が得られた。ワニ胚を用いた解析は、当初計画していた共同研究者とコンタクトが取れなかったものの、新たな協力者を得たため、2017年度中に解析ができるメドが立った。ツメガエル胚アニマルキャップを用いた脊索誘導アッセイでは予想以上の結果が得られ、転写因子の進化について重要な知見が得られた。ChIP-seq解析は当初の計画通りにいかず、進捗状況としてはよくないが、ゲノム編集技術の導入により、今後大きな成果をあげられると期待できる。レポーター解析も、実験材料は揃っており、すぐにでも結果を出せる状況にある。
ゲノム編集によってエピトープタグをツメガエルBra1、Bra2に挿入し、ChIP-seq解析を行うことで、脊索におけるBrachyuryの標的遺伝子を明らかにする。また、メダカでも同様の解析を行い、BraとNtlのゲノムへの結合領域および標的遺伝子を明らかにする。ツメガエルBra1とBra2の発現制御機構を明らかにするため、トランスジェニックレポーター解析を行う。さらに、条鰭類でNtlが脊索に特化して発現するために必要なエンハンサーを特定し、レポーター解析を行う。また、ワニ胚でもTbx19が脊索で発現していれば、ニワトリとワニのTbx19で保存されたエンハンサーを明らかにし、レポーター解析を行う。脊索誘導アッセイを引き続き行い、発現パターンとタンパク質機能との関係を明らかにする。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Developmental Cell
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