研究課題/領域番号 |
16K21559
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
安岡 有理 沖縄科学技術大学院大学, マリンゲノミックスユニット, 研究員 (70724954)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 進化 / 発生 / 転写因子 / 遺伝子発現制御 |
研究実績の概要 |
(1)(a)ゲノム編集技術を用いて、内在のツメガエルBra2にFLAGタグの配列を挿入し、抗FLAG抗体による免疫染色にて検出することに成功した。(b)ツメガエル胚を用いたトランスジェニックレポーター解析によって、各動物種Brachyury遺伝子周辺のシス制御領域の活性を検討したところ、スッポンTbx19の上流領域、ゼブラフィッシュNtl、ツメガエルBra2の上流領域に脊索エンハンサーが存在することが示された。これらのエンハンサーは、その進化的保存性が必ずしも由来する動物胚での脊索での発現と相関しておらず、脊椎動物の進化の過程でエンハンサーがコンピテンシーを維持しながら、遺伝子の発現を変化させてきたことを示唆している。 (2)(a)ゼブラフィッシュNtlのChIP-seq解析は未達成である。(b)スッポン胚を用いた発現解析の結果、スッポンTbx19が一過的に初期胚の脊索で発現することが明らかになった。この結果はニワトリ胚での既報の発現パターンと酷似しており、Tbx19の脊索での発現が主竜形類で保存されていることを示している。(c)アフリカツメガエル胚アニマルキャップを用いた脊索誘導アッセイの結果、スッポンTbx19がスッポンBraよりも高い活性を示し、イモリBraがイモリNtlよりも高い活性を示した。これらの結果は、必ずしも脊索での発現の強さを反映しておらず、脊椎動物各系統におけるBraパラログの発現の変化が、タンパク質レベルでの進化を強く促すには至っていないことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スッポン胚を用いた発現解析で、遺伝子発現の保存性を示す重要な知見が得られた。また、レポーター解析、脊索誘導アッセイによって、Brachyuryパラログの複雑な進化がより詳細に解析できた。ゲノム編集技術の開発でも予想以上の成果が上がり、今後に期待が持てる。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム編集によるタグノックイン技術を用いて、抗タグ抗体による内在の転写因子(ツメガエルBra1とBra2)のChIP-seq解析を行う。 スッポンはNtlを二次的に失っているので、Ntlを保持している他の爬虫類(アカミミガメ、クサガメ、ワニ)の胚を用いた発現解析を行い、Braパラログの発現の保存性と多様性を検討する。 発現解析、エンハンサー解析、脊索誘導アッセイの結果をまとめ、論文発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度達成できなかったワニ胚の輸入に使用する。また、追加実験に必要な試薬代や、論文投稿料にも繰り越し金を使用する。
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