研究課題/領域番号 |
16K21571
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研究機関 | 東京工業高等専門学校 |
研究代表者 |
村瀬 智之 東京工業高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (00706468)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 哲学教育 / 哲学対話 / 子どもの哲学 / 思考力 / 授業評価 |
研究実績の概要 |
昨年度までの基礎的な研究を積み上げる形で、今年度は研究協力者との連携をさらに緊密にすることで、授業案を作成するための「実質化」に向けた研究を進めてきた。 具体的には、考える哲学・倫理学の授業の要の一つとなる「哲学対話」の手法について、中等教育の教員が主体となっている研究会に論考を寄せることができた。その内容は、「哲学対話」の歴史的な位置づけや教育手法上の変遷等、これまでの基礎的な研究を踏まえた上で、公開授業として行った実際の授業の検討等である。そこで明らかになったことの一つは、哲学対話という授業手法について生徒・学生たちが意欲的に取り組んでいることであり、参加者間の議論を楽しんでいるという事実であり、同時に、参加者から出た意見に耳を傾けている(ないし、耳を傾けようとしている)という事実であった。 これらの成果を受け、哲学対話の効果をより精確に理解し評価する手法の開発を研究協力者とともに行い、その一部を研究発表としてまとめることができた。この評価手法は、単に学生や生徒たちの変化を教師側が見て取るだけでなく、授業を受けている側が哲学対話を通して考えることによる自らの変化を目のあたりにできるものでもある。このことは授業内容や対話の内容だけでなく、学生・生徒の思考の質を高めることに寄与すると考えられ、より詳細な検討を今後行っていく予定である。 また、論文や研究発表という形だけでなく、教員研修という形でのアウトリーチを行うこともできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中等教育学校で実現可能な授業案の作成という本研究課題の目的に向けて着実に研究が進んでいる点。また、実際の授業に際しての問題点の一つである評価について研究協力者とともに研究を進めている点。さらに、それらの成果について現場教員に意見や批判を得る機会をもつことができた点。以上の三点において順調に進展している。 一方、論文の公刊や一年間の授業計画の策定に関しては一部遅れが生じており、来年度に向けた課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題の最終年度となるため、これまでの成果の公刊により力を入れていきたい。また、ここまで積み重ねてきた研究をもとに作成した授業案を実行し、そのフィードバックを批判的に検討し、一年間の授業案として提示することを目標とする。また、対話型授業における評価についても、研究協力者と連携をとりながら、研究、授業手法の開発と改善を進めていきたい。 ただ、緊急事態宣言の発令等の社会情勢の中で対面授業が難しくなっている点や、そのことによる種々のスケジュールの変更等に伴い、一部の研究計画に変更が生じることを予め念頭においたうえで、より効果的に研究課題を完遂する方法を柔軟に模索していきたい。 具体的には、実践的研究の遅れが懸念されるため、基礎研究部分でやり残している点を中心に研究を進め、すでに蓄積されたものを利用し、遠隔授業における考える哲学・倫理学の議論ベースの授業の構築にも挑戦をしていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画では研究補助者をお願いし研究課題の遂行を計画していたが、研究補助者の体調等の問題で当初予定していた勤務・雇用ができなくなってしまったため。 また、年度末の一部調査出張がコロナ感染症の影響で中止となったため。
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