研究課題/領域番号 |
16K21575
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研究機関 | 鳥羽商船高等専門学校 |
研究代表者 |
三重野 雄太郎 鳥羽商船高等専門学校, その他部局等, 准教授 (40734629)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 着床前診断 / ドイツ / オーストリア / スイス / 胚保護法 / 生殖医療法 / 日産婦 着床前診断に関する見解 |
研究実績の概要 |
2016年に実施できた内容に当初の計画と齟齬が生じたので、計画を変更し、2017年度は前期に現、ドイツの現行法の下での着床前診断の運用の現状調査、後期はオーストリア・スイスにおけるPIDをめぐる法的ルールに関する文献の調査を行うこととした。 ドイツにおける現状の研究については、夏休みに現地調査を行うことができた。まず、PIDについて熱心に取り組んでいるマインツ大学医学部やリューベック大学のPIDセンターを訪問し、PID実施の現状についてインタビューを行った。そうした中から、ドイツの運用においては、医師にとっては、PIDを行い、誤診してしまった場合に訴えられるリスクが問題となっていること、PIDを受ける側にとっては、PIDのコストが問題となっていることが分かった。とりわけ、PIDが原則として健康保険の対象とならないので受診者に相当な金銭的負担がかかる点は見直す必要がある。 後期には、オーストリアの法的ルールとそれをめぐる議論の状況についての文献精読の作業を進め、オーストリアの生殖医療法のPIDに関する規定と日本産科婦人科学会の着床前診断に関する会告におけるPID規制とを比較し、両者の相違点を洗い出しつつ、日本での法制化に際しての示唆を導き出した。 具体的には、PIDの実施に際して、日本は二重の事前審査が求められている一方でオーストリアでは事前審査がない。一方で、オーストリアはPIDを実施して良い場合について法律に明確に規定しようとしているが、日本は、規定ぶりが不明確であることを指摘し、オーストリアでは、事前審査がないので、個別の事例においてPIDを実施して良いか、医師が自分で判断しなければならないため、要件を明確化する必要があるが、日本では、会告で要件は厳格に設定せず、個別の事例の判断を学会の倫理委員会に任せることで、柔軟に対応しようという姿勢が見られることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度の前期は、ドイツの文献の精読と現地調査の準備、現地調査を行った。それにより、本研究課題の内容のうち、ドイツの法的ルールとそれをめぐる議論、及びドイツにおける現行の法制度の下での運用の現状の部分についてはほぼ完了した。ドイツについては、今後公刊される文献の精読・検討のみが残ることとなった。 2017年度の後期は、オーストリアの法的ルールとそれをめぐる議論の部分に中心的に取り組み、文献の精読・検討を行い、ほぼ完了した。また、上述の通り、オーストリアの生殖医療法のPIDに関する規定と日本産科婦人科学会の着床前診断に関する会告におけるPID規制とを比較し、両者の相違点を洗い出しつつ、日本での法制化に際しての示唆を導き出す作業も行い、その成果を日本医事法学界第47回研究大会で報告した。この内容は、同学会の学会誌『年報医事法学33号に』掲載が決まっている(2018年9月刊行予定)。 残る課題はスイスの法的ルールとそれをめぐる議論の部分とオーストリア・スイスの現地調査、そして研究の総括の部分であるが、これは2018年度中に完了できる見込みが十分にある。 以上のことから、研究はおおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、まず、スイスの法的ルールとそれをめぐる議論の部分を完了させる。そこでは、スイスの生命倫理委員会の答申や法案、議会議事録などの精読の作業が中心となる。また、同時にドイツ・オーストリアに関する文献で新たに公刊したものを随時フォローする作業を進める。 そして、夏休み期間中にオーストリアとスイスの現地調査を行い、着床前診断を実際に行っている大学病院や着床前診断の法規制の問題に造詣の深い研究者にインタビュー調査を行う。この調査により、オーストリア・スイスにおいて新法の下で実際の運用が順調になされているのか、問題点はないのかを明らかにする。 そのうえで、本研究の総括、仕上げの段階として、ドイツ・オーストリア・スイスの3ヵ国の共通点と相違点を洗い出し、そこから日本への示唆を導き出す。そして、日本における着床前の法規制のあり方について提言を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、新たに公刊した文献が少なかったため残額が生じたが、今年度は現地調査を行うとともに、新たに購入予定の文献が多数あるので、そのための費用に充てる。
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