研究実績の概要 |
本年度は全体のまとめとして,着目している雲頂高度の高い雲(High Top Cloud; HTC)が南極・昭和基地における降雪に対して寄与をもつことを確認した.衛星雲画像データと昭和基地における積雪深データや気象観測データを用いて特に2009年のブリザードに着目した解析を行った.結果,多雪時に, Atmospheric Riverと呼ばれる中緯度からの水蒸気輸送が見込まれるHTCがよく見られた.しかしブリザードは飛雪効果を持ち,衛星雲画像から抽出した雲データを降雪量として換算することは難しく,収支として涵養量を表すことが妥当であることを確認した.
また,自動識別を目的として5年分のNOAA/AVHRR ch.4の雲画像を用い,HTCを代表とする降雪時の雲を正例としたCNNによる学習を行った.画像にすべてが収まっていない場合や,降雪が起こる直前の画像をnot good(NG)とし,全体を捉えられている場合(Good)と併せた2値/区別した3値分類を行った.結果として,2値分類の学習がより精度が高かったが,正例のテスト精度は7割に到達出来ていなかった.また,Grad-CAMの可視化結果から,2値分類は雲の連続性,3値分類は雲の全体的な特徴を見ていると考えられた.30年分の衛星結合画像に対する識別に適用するには,まだ正答率が十分でないという結果となり(Accuracy 70%),より一層の学習器の精度向上が必要と判断し,本研究では画素の荒い大きな画像に対しては学習・識別を行わなかった.
国際共同研究としてはウィスコンシン大学・Lazzara博士と2019年12月に参加した国際ワークショップ,国際シンポジウムにて研究内容の共有の上,議論を行った.今後も引き続き全体の結合画像データに適用する学習器を構築する方向で協力体制にある.
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