研究課題/領域番号 |
16K21588
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
登 久希子 国立民族学博物館, 外来研究員 (50772258)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 現代美術 / 作品制作のプロセス / 参加 / 贈与論 |
研究実績の概要 |
本研究は、現代美術の文脈において「ソーシャリー・エンゲイジド・アート」や「ソーシャル・プラクティス」と呼ばれる実践を事例に、社会や芸術といった概念を人類学的に再検討することを目的としている。本研究で調査してきた事例はいずれも、作品/プロジェクトの完成に複数の参加者を必要とするような実践、つまり参加者が身体的・実際的に関与することで作品が成立する「参加型アート」と位置づけることができる。それらの取り組みが、従来的な「もの」としての作品といかに異なるのか、またどのように同じ問題を共有しているのかを論じるため、贈与論の先行研究と昨今の「もの」研究の議論を再検討している。 2017年度は文献研究に加えて、ニューヨーク、ポーランドおよびインドネシアにおいてフィールドワークを行なった。ニューヨークとポーランドでは特定のアートプロジェクトに関する参与観察、アーティストおよび参加者へのインタヴュー調査、そして資料収集を行なった。ポーランドの調査先のプロジェクトとアーティストがインドネシアにおいて展覧会を開催したことから、ジャカルタとジョグジャカルタで関係者にインタヴュー調査を行なった。これまでの研究を通して、参加者の制作プロセスへの関わりを前提とする「参加型アート」が、西洋近代的な芸術という概念における矛盾と葛藤に関係していることが明らかになりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に延期したニューヨークでの調査を2017年度に実施した。フィールドワークで得たデータをもとに、芸術分野における先行研究の理論的再考、人類学的研究との接合について考察を深め、投稿論文を準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
6月に開催される学会ではこれまでの研究成果に基づいた発表を行う。 2018年度はこれまで続けていたアートプロジェクトおよびアーティストの最終的な調査とする。 年度末に予定しているワークショップと報告書の刊行の準備についても適宜進める。
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