研究課題/領域番号 |
16K21590
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
重松 康之 公益財団法人がん研究会, 有明病院 総合腫瘍科, 医員 (40749511)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 胃癌 / 補助化学療法 / 遺伝子発現 / エピゲノム異常 / バイオマーカー / 人体病理学 |
研究実績の概要 |
1. 解析対象の選定: 対象は当院で胃がんに対する根治術を施行された症例で, 術後補助化学療法施行症例とした。胃がん術後補助化学療法後5年以上無再発である症例を治癒症例としとして含めた。再発症例については、さらに1) 術後補助療法中の再発症例(早期再発症例)、2) 術後補助療法後2年半以内の再発症例、3) 術後5年以内の再発症例、にそれぞれグループ分けした。治癒症例および再発症例をそれぞれ200例ずつを抽出した。治癒症例群および再発症例群を100例ずつ合わせてスクリーニング用セット(200症例: 治癒症例 100例、再発症例100例)と検証用セット(200症例: 治癒症例 100例、再発症例100例)に分けた。 2. 臨床病理学的特徴量の選択: 病理学的な特徴量として、腫瘍の場所、腫瘍の大きさ、深達度、脈管侵襲の有無、分化度、リンパ節転移の個数、病期、HER2遺伝子発現状況、年齢、性別、身長、体重を評価項目とし、治癒症例群、再発症例群として各々まとめた。現在、スクリーニング用セット内の治癒症例群および再発症例群でその特徴量について比較している最中である。 3. エピゲノム異常を用いたバイオマーカー探索: ゲノム網羅的なエピゲノム異常解析については、スクリーニング用セットの治癒症例群と再発症例群からそれぞれ両群間で臨床病理学的特徴を揃えた症例の絞り込みを行っており、実施する方向ですすめている最中である。 4. 発現状態の比較: ドライバー遺伝子を含む主要ながんパスウェイに関連した遺伝子群の発現について治癒症例群と再発症例群での比較を準備している。具体的には、当研究室にあるnCounter(NanoString社)によるmRNAの定量システムを用いて、エピゲノム異常解析に用いた検体を用いて、エピゲノム情報と合わせて統合的に検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗状況はやや遅れている。 症例選択の段階で、データベースに含まれていない情報も追加で収集し評価する必要が出てきたため、その情報の収集とまとめに時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、解析対象として選定された症例群のうち、スクリーニング用セットの症例を用いて、以下のことを行う。 1)-1 臨床病理学的特徴の差異の評価を継続し治癒症例群と再発症例群を分けうる特徴の有無について評価する; 1)-2 単一の特徴量での分類が困難な場合は、それらの変量の組み合わせにも着目する。2)-1 ゲノム網羅的なエピゲノム変化を治癒症例群と再発症例群の一部の症例で行い、治癒症例群と再発症例群を分けうる候補マーカー遺伝子の絞込をおこなう; 2)-2 絞り込んだ候補マーカー遺伝子が、網羅解析に用いた胃がん検体以外の検体でも再発あるいは治癒を予測できるかを評価する。3)-1 ドライバー遺伝子を含む主要ながんパスウェイに関連した遺伝子群の発現の差異を治癒症例群および再発群を用いて評価し、治癒症例群と再発症例群を分けうる候補マーカー遺伝子の絞込をおこなう; 3)-2 絞り込んだ候補マーカー遺伝子が、発現解析に用いた胃がん検体以外の検体でも再発あるいは治癒を予測できるかを評価する。 上記、1)-3)において、感度および特異度が高い特徴所見あるいはマーカー候補に対して、検証用検体を用いて再度その有用性について検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究対象症例の選別に時間を要したため、当該年度に当初予定していたゲノム網羅的なエピゲノム異常解析や遺伝子発現解析まで進めることができず遅れてしまっている状況である。 また、対象症例からの核酸抽出などの解析前の準備に要する物品は当該部署の共用物品を使用することができたため、予定よりも出費が減少した。次年度以降で、予定している解析を進める方針である。
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次年度使用額の使用計画 |
治癒症例群および再発症例群の胃がん検体を用いてHumanMethylation450K BeadChipを用いたゲノム網羅的なエピゲノム解析およびnCounter Analysis Systemを用いた遺伝子発現解析を行い、両者を選別しうる候補バイオマーカーの抽出に用いる。
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