研究課題/領域番号 |
16K21590
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
重松 康之 公益財団法人がん研究会, 有明病院 総合腫瘍科, 医員 (40749511)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 胃癌 / 術後補助化学療法 / 再発 / 予後不良因子 / 遺伝子発現 / エピゲノム異常 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
1. 解析対象者の選定:2008年から2012年にかけて当院で胃がんに対する胃切除、R0施行例でpStage IIあるいはIII期と診断された、かつ、術後にS-1投与が施行された症例は441症例認められた。しかし、S-1内服期間が再発リスクファクターとして重要な因子であることが示されたため、対象患者の選別に際してS-1内服期間が半年以上であるという条件を盛り込んだ結果、対象症例が320症例、再発症例が85症例となった。これらを用いて、スクリーニング検体と検証用検体に再度分け直した。 2. 臨床病理学的特徴量の選択:病理学的な特徴量として、腫瘍の場所、腫瘍の大きさ(深達度)、深達度、脈管侵襲の有無、分化度、リンパ節転移の個数、HER2遺伝子発現状況、年齢、性別、身長、体重を評価項目とし、治癒症例群と再発症例群で検討中である。 3.エピゲノム異常を用いたバイオマーカー探索:ゲノム網羅的なエピゲノム異常解析については、スクリーニング検体の治癒症例群と再発症例群でその特徴を揃えた症例の絞り込みを行っている最中であり、実施する方向で進めている。 4. 発現状態の比較:ドライバー遺伝子を含む主要ながんパスウェイに関連した遺伝子群の発現について治癒症例群と再発症例群での比較を準備している。対象候補となる症例が決まり次第、核酸の抽出を行いエピゲノム異常と合わせて、統合的に解析する予定である。その際に、既報告のマーカー候補遺伝子発現もあわせて評価し、その有用性についても検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)倫理審査委員会での承認に時間がかかったため、ヒト検体を用いた研究の開始に遅れが生じた。2)対象症例の選別に際して、新たに得られた知見などから対象症例の見直しが必要となったため、実際の症例の決定に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は解析対象として選定された症例群のうち、スクリーニング用セットの症例を用いて以下のことを行う。 1. 臨床病理学的特徴の差異の評価を継続し治癒症例群と再発症例群を分けうる特徴の有無について評価する。また、単一の特徴量の分類が困難な場合は、それらの変量の組み合わせにも着目する。 2. ゲノム網羅的なエピゲノム変化を治癒症例群と再発症例群の一部の症例を用いて、両者を分けうる候補マーカー遺伝子の絞り込みを行う。次に、絞り込んだ候補マーカー遺伝子が、網羅解析に用いた胃癌検体以外の検体でも再発あるいは治癒を予測できるかを評価する。 3. エピゲノムの評価と合わせて、ドライバー遺伝子を含む主要ながんパスウェイに関連した遺伝子群の発現の差異を治癒症例群および再発症例群で比較して、候補となりうる遺伝子発現異常があるかを評価する。あわせて、既報告としていわれいてるいくつかの候補遺伝子についてもその有用性について検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は当初当該年度に予定していたゲノム網羅的なエピゲノムあるいは遺伝子発現解析まで進めることができずに遅れてしまっている状況である。また、対象症例からの核酸抽出などの解析前の準備に要する物品は当該部署の共用物品を使用することができたため、予定よりも出費が減少した。次年度以降で、予定している解析を進める方針である。
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