消化器癌、特に、胃癌に着目し、その補助化学療法に対する抵抗性を示す集団の選別に有用な臨床病理学的な特徴や分子細胞生物学的な特徴を選別するために、種々の検討を行った。 <形態学的な特徴> 胃癌に対する根治的切除症例において、術後補助化学療法として投与されるS-1(通常術後1年間服用)を術後に半年以上服用している症例に絞り込み検討したところ、当院のデータベースでは293症例が該当し、内訳は治療抵抗例(再発例)は67症例で無再発症例(少なくとも5年以上再発なし)は226症例であることがわかった。これらの症例を対象に、腫瘍細胞の分化度、深達度、静脈侵襲の程度、リンパ管侵襲の程度、リンパ節転移の個数について、再発症例と無再発症例とで比較検討した。その結果、癌の分化度が治療抵抗性と有意に関係していることがわかった。また、III期ではリンパ節転移数が治療抵抗性と有意に関係していた。 <ゲノム網羅的なDNAメチル化解析> ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)検体を用いて、治療抵抗例8例と無再発症例8例の腫瘍部から抽出した核酸を用いてEPICアレイを使用してゲノム網羅的なメチル化レベルを評価した。転写開始領域のCpGアイランドにしぼり、治療抵抗群で無再発症例と比較して、脱メチル化されている遺伝子40個と逆にメチル化されている遺伝子20個を絞り込んだ。これらは、両者を区別しうる候補マーカーと考えられた。 <免疫組織化学的な特徴> DNAメチル化解析で絞り込んだ候補マーカーに対して、タンパク発現として評価するために、候補マーカーの遺伝子発現を胃癌の腫瘍部のFFPE検体を用いて検討した。その結果、治療抵抗群で無再発症例と比較して、脱メチル化されている遺伝子の一つであるSEPTIN5遺伝子の発現において、治療抵抗群の腫瘍で有意に発現の上昇が見られ、有用な選別マーカーになる可能性が示唆された。
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