研究課題/領域番号 |
16K21592
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研究機関 | 公益財団法人東洋文庫 |
研究代表者 |
五味 知子 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 奨励研究員 (20751100)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 中国史 / ジェンダー / 庶民史 / 明清史 |
研究実績の概要 |
本年度は、二本の学術論文を発表した。論文「清代における殺人事件の裁判と女性――楊乃武案を手掛かりに」(『歴史学研究』946号)は、夫殺し冤罪事件を事例として、清代の殺人事件の裁判における女性の立場について論じた。楊乃武の姉や妻は代理人を立てて、冤罪を訴えた。誣告とされても、代理人が処罰されるため、彼女たちは処罰を恐れる必要はなかった。彼女たちの訴えは、新聞に大きく報道され、実際に解決へとつながった。論文「纏足・大脚・赤脚――明清時代における婢のイメージとメディア」(『中国のメディア・表象とジェンダー』研文出版)では、明清時代の小説、新聞、画報などのメディアにおいて、婢のイメージと足・鞋がどのように結び付いていたかについて論じた。『申報』の広告に見る失踪した婢の足を分析すると、四分の三が纏足をしていなかった。明清時代の漢民族の中にも、纏足をしていなかった女性は数多くいたが、それは身分や地域と関連していた。身分的流動は、婢の足に象徴的に表れており、『申報』の広告にみる婢の「半小脚」、「半大脚」、「中脚」、「圓脚」は、婢の人生の流転を示しているといえると結論づけた。 口頭発表「清代の告示文にみる庶民生活と地方官」(歴史学会第41回大会自由論題報告)では、清代の告示文に描かれた庶民生活、すなわち地方官から見た庶民生活の特徴について分析するとともに、告示を庶民層まで伝達するためにはどのような工夫が見られたのか、また、民間社会において、告示はどのように受け止められていたのかについて検討した。口頭発表「清代官媒初探」(東洋文庫談話会)では、清代の地方行政において「官媒」と称された下役人が歴史的にどのような変遷をたどったかについて論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、当初の計画以上の論文と口頭報告を成果として出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度より、代表者の所属機関が変わった。中国史の資料へのアクセスは、これまでと比べて少し悪くなったが、積極的に他機関へ足を運んで資料調査をしたり、図書館の複写取り寄せサービスを利用したりすることで、十分に、対応可能である。新しい研究環境による刺激を受け、これまでとは違った発想を持つことができる点はプラスであると思われる。新しい所属機関には中国史専門の研究者はいないが、英国史、トルコ史、日本史などの研究者と交流し、研究推進に役立てていきたい。
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