研究課題/領域番号 |
16K21598
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研究機関 | 国立研究開発法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
松原 恵理 国立研究開発法人森林総合研究所, 複合材料研究領域, 主任研究員 (20467898)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 木材香気成分 / 嗅覚刺激 / 前頭前野 / 血流量変動 / 主観評価 |
研究実績の概要 |
香りは木材が持つ特徴の一つであり、特に針葉樹では、スギとヒノキの香りが違うことなど、樹種により香りが異なることについて、人は経験的によく知っている。香りは揮発性が比較的高い成分で構成されており、構成成分は既に多くの先行研究にて報告されているが、さらに人の生理・心理応答に及ぼす影響を明らかにすることにより、付加価値の高い木製品製作等に活用できると考えた。そこで本研究では、人の情動や認知に最も重要な前頭前野に注目して、機能性木材香気成分を見出すことを目的とした。 本年度は、供試試験材としてスギ、ヒノキ、コウヤマキ、サワラの天然乾燥材を入手、心材部と辺材部を合わせてチッパー及びハンマーミルを用いて小片化して、水蒸気蒸留法により精油を作製した。精油に含まれる成分は先行研究と同様であった。嗅覚刺激実験は、研究所内の人工気候室にて温度と湿度を制御した条件下で、成人男性を被検者として行った。前頭前野の血流量変動を生理応答の評価指標とするため、(株)島津製作所製の脳機能計測装置を用いて計測した。計測点は額部分の計42か所として、嗅覚刺激前後の安静時及び刺激時を連続的に計測した。さらに、心理応答も調査するため、供試した材料に対する主観的な評価を調査用紙に記入させた。 本研究成果のうち、主観調査の結果として、アスナロ及びヒノキの香りに対する快感情が高く、統計的にも有意な差であることが分かった。また、嗅覚刺激に用いた材料により前頭前野の血流量変動に違いが見られる傾向が確認された。現在、血流量変動について全被検者のデータ解析を進めるとともに、本研究で用いた供試材料の香気成分の定性分析を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脳機能計測装置のレンタル品を使った実験実施が年度末に近い時期になったため、データ解析が遅れており、現時点における進捗状況はやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の実験に供す材料は、本年度の血流量変動及び主観評価の解析結果をもとに選定する。また、専用装置を保有する研究者との連携により香気成分の分離に取り組み、生理・心理応答の評価と合わせることで機能性香気成分を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、予定していた実験被験者が不参加となり差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の実験における被験者数を増やし、その謝金に充てる計画である。
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