研究課題/領域番号 |
16K21602
|
研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
今村 岳 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, ICYS研究員 (60715754)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | センサ / データ解析 |
研究実績の概要 |
ナノメカニカルセンサをベースとした気体試料の分析手法として、申請者は瞬間パージ法(Instantaneous Purge法,IP法)を開発した。これは、ナノメカニカルセンサを試料の蒸気で飽和させ、瞬間的に大気に開放する際のシグナルの変化からパラメータを抽出し、それをもとに解析を行う手法である。これにより通常化学センサ測定において必要となるポンプやマスフローコントローラが不要となることから、小型の簡易的な測定器での分析が可能となる。本研究ではこのIP法を用いて生体試料である人間の尿を測り非侵襲的に疾病を判断することを試みる。 本研究ではまず、IP法の基礎原理となるナノメカニカルセンサのシグナルからの情報抽出について粘弾性モデルに基づき検討を行った。その結果、実験結果からの物理的・化学的性質に関しての時定数の抽出が可能であることが明らかとなり国際会議(13th International Workshop on Nanomechanical Sensing)にて発表を行った。さらに、本手法を尿ではなく呼気に応用した診断方法への応用可能性についても検討を行い国際会議(The 16th International Meeting on Chemical Sensors)にて発表した。 さらに、IP法はナノメカニカルセンサの原理に基づいたパラメータ抽出法であったが、ナノメカニカルセンサに限らないあらゆる化学センサに適応可能な解析法として伝達関数法を開発した。この手法は多チャンネルの化学センサを用いることでIP法同様にポンプやマスフローコントローラで流量を制御することなく試料の分析が可能となる画期的な方法である。本解析手法について理論的な基礎を固め、試料として複数の溶媒蒸気を用いた実験を行い、これらの識別に成功した。本件については特許の申請を行った。(特願2017-34419,2017年2月27日,特願2016-230468,2016年11月28日.)
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定ではIP法を用いた測定による詳細な情報抽出を試みる予定であったが、研究が進むに連れて、抽出できるパラメータがガス種の識別を効率的に行う指標として非常に有用であること、呼気への応用が期待できることなど、予定していたよりも大きな成果を得ることができた。さらに、ナノメカニカルセンサでの測定に限定したIP法から、あらゆる化学センサに適応可能な伝達関数法の開発が行われたことは当初の計画を大きく上回る進展である。これらの進捗を鑑みるに、平成28年度の研究は当初の予定よりも進展したと言える。
|
今後の研究の推進方策 |
伝達関数法は全ての化学センサに適応可能、かつポンプやマスフローコントローラで流量を制御する必要がないことから、IP法をさらに発展させた測定手法であるといえる。加えて伝達関数法による測定で得られる情報はIP法で得られる情報を全て含むことから、今後はIP法から伝達関数法による測定に切り換えて研究を行っていく予定である。平成29年度は当初の計画にある受容体の開発および実際の生体試料(尿)サンプルの測定を行い、複合センサシステムによる疾病の非侵襲的な検査方法の開発に臨む。
|