汚染水や環境からのストロンチウム等の有害金属イオンの効果的な除去は未だ急務の課題である。膨大な範囲における除染には、安価で高機能な除染材料が求められる。ストロンチウムの吸着については一般的に、極めて近い性質を持つ競合イオンであるカルシウムイオンの存在がストロンチウム吸着の妨げになり、最適な性能を有する吸着材を確立することが困難とされている。このような背景により、本研究では以前よりストロンチウム吸着材として知られているアパタイトに着目して、実用化に向けた材料開発を行うことを目的に検討を行ってきた。計画開始以降、アパタイトの結晶構造をナノオーダーで制御することにより、カルシウムイオン存在下でもストロンチウムに対して高い選択性を材料に付与することを見出してきた。最終年度では、コスト及び性能の観点から実用化に即した材料開発を行ってきた。結果、廃材となる豚骨や牛骨などの家畜骨からアパタイトを極めて簡便に抽出する方法を見出すことに成功した。また、抽出したアパタイトを化学的に修飾することにより、競合イオン存在下においても既存のアパタイト材料よりもストロンチウムに対して極めて高い吸着性能を有する材料の確立を実現した。また、この材料は鉛やカドミウム等の重金属に対しても高い吸着性能を有することを明らかにした。フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)やエックス線吸収微細構造(XAFS)解析により、物性評価や吸着挙動の評価を行い、本材料の有する高い吸着性能の発現メカニズムを明らかにした。
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