1)風洞を使った、疑似的な気流中の受動的飛行状態を再現した観察結果からは、24時間以上もほぼ休むことなく羽ばたくことが可能であることがわかった。また、追い風(後方気流)に反応し、持続的は羽ばたき行動を行った。 2)気流解析ソフトウェアHYSPLIT(アメリカ海洋大気庁)を用いて気流による飛行軌跡(流跡線)の推定した。飛来が成功したと推定された日の前後の天気図(気象庁「日々の天気図」)を調べた結果,従来から言われていた前線の通過と流跡線解析による推定飛来日との一致は見出せなかった。 3)風洞試験と流跡線解析から、特徴的な西風が生じる数日で越冬可能地である関東・東海・近畿地方から非越冬地である東北地方へのコナガの長距離移動が可能であることがわかった。また、その長距離移動のスケールは数百~千km程度であると推定された。 4)本研究のアウトリーチ活動として、コナガの長距離移動の特性に応じた防除技術の開発と普及を行った。具体的には、コナガの越冬可能地域と非越冬地域での薬剤抵抗性の進化の違いから、越冬生態と長距離移動に伴う抵抗性遺伝子の流入状況に応じた薬剤ローテーション体系を提案した。特に本研究結果は、コナガの非越冬地である東北・北海道地域については、コナガの薬剤抵抗性対策をともなう効果的な防除法として「30日ブロックローテーション」のアイディアにつながった。また、県や農研機構が主催する防除研修会やワークショップ、一般広報誌などで技術についての情報提供を行った。
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