欧州では2011年にオルソブニャウイルス属のシュマレンベルクウイルス(Schmallenberg virus:SBV)が出現し、反芻動物に発熱、泌乳量低下、新生子の体形異常等を引き起こして甚大な経済的損失が生じた。SBVは、同属のサシュペリウイルス(Sathuperi virus:SATV)とシャモンダウイルス(Shamonda virus:SHAV)の遺伝子再集合により生じたウイルスと考えられており、SATVとSHAVは我が国でも分離されている。そこで本研究では、SBVと同様のゲノムをもつ遺伝子再集合体(リアソータント)ウイルスがわが国に出現する可能性を検討した。SATVとSHAVの国内分離株を培養細胞(HmLu-1細胞)に重複感染させたところ、合計5通りのリアソータントウイルスが回収され、SBVと同様の構成のゲノムをもつウイルスも含まれていた。これらのリアソータントウイルスとSATVおよびSHAVでは、HmLu-1細胞での増殖性に有意な違いが認められなかったが、マウスを用いた実験では、一部のリアソータントウイルスが他のウイルスと比較して神経病原性が高いことが示された。このことは、日本国内あるいは近隣諸国でSATVとSHAVが遺伝子再集合を起こした場合、哺乳類に対して、より病原性の高いウイルスが出現する可能性を示唆する。また、本研究では、アルボウイルスによる牛異常産の小動物モデルを開発する目的で、シリアンハムスター妊娠個体にアカバネウイルスのOBE-1株(Genogroup I)およびKM-1/Br/06株(Genogroup II)を皮下接種した。その結果、いずれの株を接種した群でも体形異常を伴う死産や虚弱子の出産が認められ、組織病変が主に筋組織に認められた。よって、シリアンハムスターがアルボウイルスの病原性評価に活用可能な小動物モデルとして有用である可能性が示された。
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