研究課題/領域番号 |
16K21610
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
上野 和広 島根大学, 生物資源科学部, 助教 (60560167)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 繰返し載荷履歴 / 動的強度 / 最大ひずみ / 拘束圧 / 密度 |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究計画および目的は,1.ため池堤体土として想定される土質材料(砂質土および粘性土)に対し,昨年度考案した被災履歴を考慮した非排水繰返し載荷試験を実施し,土質材料の物性と密度の相違が被災履歴に伴う動的強度の低下・回復特性に与える影響を明らかにすること,2.被災履歴を考慮した非排水繰返し載荷試験結果を分析し,動的強度の低下・回復特性の損傷依存性を明らかにすること,であった. 複数の締固め度で作製した砂質土および粘性土の供試体を用いて被災履歴を考慮した非排水繰返し載荷試験を実施し,繰返し載荷履歴に伴う動的強度の低下・回復特性に土質材料の物性と密度が与える影響に関するデータを取得した.この結果から,以下のことが明らかになった.過去の繰返し載荷履歴が土質材料の動的強度に与える影響は,繰返し載荷によって生じたひずみの大きさに依存する.ひずみが小さい場合は土質材料の動的強度は増加し,ひずみが約0.5~1%を超えると動的強度は低下する.また,過去の繰返し載荷履歴によって生じたひずみが大きくなるほど,土質材料の動的強度は小さくなる.土質材料の動的強度の変化傾向は,直前の繰返し載荷によって生じたひずみの大きさと,それ以前の繰返し載荷履歴で生じたひずみの大きさの関係によって異なる.直前の繰返し載荷によって生じたひずみの大きさが過去最大の場合は土質材料の動的強度は低下し,そうでない場合は動的強度は増加あるいは一定の値を維持する.繰返し載荷履歴による土質材料の動的強度の低下は,供試体の締固め度が高いほど顕著になる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度に予定していた試験は概ね計画通りに実施することができた.しかしながら,研究代表者の所属が変わったことにより,研究環境が変化したため,試験の実施に若干の遅れが生じた.ただし,遅れが生じた試験については既に着手しているため,研究機関を通しての進捗には大きく影響しないと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,1.地震による被災の間隔が動的強度の低下・回復特性に与える影響解明,2.被災履歴に応じた動的強度の変動推定モデルの開発,を目的として検討を行う. ため池が供用期間中に経験する複数の地震の時間間隔は一定でないことから,地震による被災の間隔が動的強度の低下・回復特性に与える影響を明らかにする必要がある.非排水繰返し載荷後に行う再圧密で異なる継続時間を設定した試験を実施し,地震時の損傷によって低下した土の動的強度がその後の再圧密過程で回復する際の時間依存性を明らかにする. また,被災履歴を考慮したため池堤体の耐震性評価手法を確立するため,動的強度の低下・回復特性を土質材料の物性や密度毎に整理し,供用期間中に変動する動的強度を推定するための「被災履歴に応じた動的強度の変動推定モデル」を開発する.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)物品の見積額と実際の金額に差額が生じたため. (使用計画)今年度の残額分は,次年度に消耗品の購入に使用する.
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