研究実績の概要 |
今年度は、昨年度得られたEc0VV6変異型(Td=136.8℃(+23.6℃))に荷電残基を導入することで更なる熱安定化を試みた。一残基導入で変性温度が増加したE34R(+2.5℃), E57R(+4.9℃), S110R(+4.1℃)をEc0VV6変異型に導入したところ、Ec0VV_6 E57R(+23.6℃) ではTdが変化せず、Ec0VV_6 E34R(+20.6℃) とEc0VV_6 S110R(+22.1℃)においてはEc0VV_6よりも不安定化した。一方、Q25R, T101E, N108Kの3変異に関しては、Ec0VV_6へ導入すると熱安定性は増加した。Ec0VV_6 T101EではTdが+26.1℃、Ec0VV_6 Q25R/T101EではTdが+27.1℃、Ec0VV_6 Q25R/T101E/N108E(Ec0VV_9)ではTdが+29.0℃増加した。 また、Ec0VV_6において導入した6つの荷電残基について、どの荷電残基とイオン対を形成(もしくは反発)しているかをMD実験(40 nsec)の結果より検証した。Ec0VV_A39D一残基変異型では静電相互作用が著しく低下し熱安定性も低下するが、Ec0VV _A39D/S48K二重変異型では新たに導入したAsp39-Lys48同士がイオン対を形成し、静電相互作用を獲得することで熱安定化していることが示唆された。Ec0VV_6変異型においても、Asp39-Lys48イオン対形成による静電相互作用増加が示唆された。H72K一残基変異型では、C末端(Arg112)とのイオン対形成が示唆され、Ec0VV_6においてもこのイオン対による静電相互作用は保持されていた。S82K, Q87K, T88R変異導入のいずれの場合でも、一残基変異型の場合と同様にEc0VV_6においても静電相互作用増加に寄与していることが示唆された。
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