研究課題
最終年度は高温および乾燥ストレス時に機能する転写因子DREB2Aについて、高温ストレス特異的な正の制御因子NF-YB3と乾燥ストレス特異的な正の制御因子NF-YB2のノックアウト変異体の解析および、細胞種特異的なプロモーターの探索を行った。ノックアウト変異体の解析では、nf-yb3変異体において高温ストレス誘導性のDREB2A標的遺伝子の発現が低下しており、さらに高温ストレス耐性が低下していること、またnf-yb2変異体では乾燥ストレ誘導性のDREB2A標的遺伝子の発現が低下しており、さらに乾燥ストレス耐性が低下していることが示された。興味深いことに、nf-yb2の変異は植物の高温ストレス応答には影響を与えていない一方で、nf-yb3変異体では乾燥ストレス時において乾燥ストレス誘導性遺伝子の発現が上昇していることが確認された。このことから、NF-YB3は直接あるいは間接的に植物の乾燥ストレス応答に負の影響を持っていることが示唆された。細胞種特異的なプロモーターの探索では、候補のプロモーターを用いて、GFPレポーターを発現した植物の観察やウエスタンブロッティング実験を行うことによって、地上部において維管束、表皮、葉肉細胞特異的な発現パターンを持ち、ストレス応答性の低いプロモーターをそれぞれ単離した。また、これらのプロモーターを用いて、細胞種特異的な核単離方法であるINTACT法を行うための形質転換植物を作出した。期間全体を通じてDREB2Aという高温と乾燥時に働く重要な転写因子が、どのようにしてストレスに特異的な標的遺伝子を制御しているかについて、転写複合体形成という観点から明らかにすることができた。また、ストレス非応答性の細胞種特異的発現プロモーターを単離することで、さらに細胞種特異的な解析を行う実験系の準備を整えることができた。
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Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 114 (40) ページ: E8528-E8536
https://doi.org/10.1073/pnas.1704189114
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2016/20160204-1.html
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2017/20170919-1.html