研究課題/領域番号 |
16K21627
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
藤田 生水 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, 基礎科学特別研究員 (80615138)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 神経幹細胞の対象分裂 / 大脳新皮質発生 / ライブイメージング |
研究実績の概要 |
本研究は哺乳類の大脳皮質発生において、神経幹細胞が自己複製的に分裂する際に、細長い細胞形態を維持する様式とその機構、またその特殊な細胞形態によって生じる組織の複雑さが発生過程にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを目指している。本年度は、その解析に際して最も困難な問題の一つであった、マウス大脳皮質発生初期、すなわち神経幹細胞が自己複製的に増殖する時期の生きた組織のライブイメージングを可能にするための、培養方法と観察手法に関して進展があったので、その概要を報告する。これまで、マウス神経幹細胞の増殖期における神経幹細胞の振る舞いをライブイメージングによって詳細に明らかにした報告はない。今回確立した培養法によって、神経幹細胞の自己複製、特に、その特徴的な形態を維持する際の詳細な振る舞いを捉えつつある。さらに、ライブイメージングに際して細胞形態や細胞内構造を可視化するために、従来は子宮内(または子宮外)電気穿孔法や、確立されたトランスジェニックマウスの使用が主要な手法であったが、前者は発生初期の胎仔に対しては技術的に困難であること、後者はトランスジーンの導入効率が低く、またマウス系統の確立まで非常に時間を要すること等が問題であった。今回、トランスポゾンを用いた遺伝子発現システムを受精卵に注入する手法を用いて、非常に高効率でトランスジーンを持つ胎仔を得る系を確立した。これにより、多コピーのトランスジーンを持つ胎仔をF0世代で非常に効率的に解析できることを確認した。上記等の技術的進展により、これまで困難であったマウス神経発生初期の神経幹細胞のライブイメージングが可能となり、次年度の研究を推進するための技術的基盤を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は技術的基盤を得ることに注力し、その結果、神経発生初期の生組織ライブイメージング技術を確立することができたことは、大きな進展であった。このライブイメージング系を用いて、神経幹細胞の自己複製的対象分裂における突起の複製様式について、興味深い結果が得られている。一方で、細胞形態・細胞配置の定量的解析には課題が残るが、高効率なトランスジェニックマウスのF0解析法を応用することで、発生初期の細胞のまばらな標識が可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は確立した神経発生初期のライブイメージング系を用いて、神経幹細胞の形態的自己複製様式の定量的な解析を行う。その際、分裂軸を撹乱させて分裂軸の対称性を強制的に失わせるマウス変異体を用いるなどして、神経幹細胞の形態的な可塑性の程度と、そのメカニズムを詳細に解析する。また、高効率なトランスジェニックマウスのF0解析法を用いて、神経幹細胞のクローンをまばらに標識し、その形態と配置を定量的に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
技術基盤の確立に注力し、主要な解析を次年度に行うこととしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
マウス胚操作の技術支援の利用料、並びに解析に使用する各種抗体、試薬、機器類を購入費に充当する。
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