本研究では、三次元の相対論的流体シミュレーションとモンテカルロ輻射輸送計算を組み合わせることによって、大質量星の重力崩壊に起因するガンマ線バーストに伴う光球面放射の評価を行なっています。今年度は昨年度に引き続いて計算の高精度化を行うために、以前と比べて10倍の粒子数を採用したモンテカルロ輻射輸送計算を行いました。これにより、スペクトルの形状および偏光の時間変動のより詳細な解析が可能となりました。
主に明らかになったことは、以前の計算が示したようにスペクトルのピークや明るさは観測と整合する一方で、その形状はほとんどの場合観測のものと比べると幅が狭いということです。その原因としては、数値シミュレーションの空間解像度が不十分であった、もしくは光球面放射に加え本計算では取り入れていなかった放射過程も混在している可能性などが考えられます。したがって、今後の研究においては上記の効果を考慮した数値計算に取り組むことが重要になります。
また偏光の計算からは、偏光度は典型的には数パーセントで時間変動を示すことが分かり、その偏光の方向も大きく時間変動することが明らかになりました。これらの計算結果は、POLARによるガンマ線バーストの最新の偏光観測結果と整合するものです。より詳細を突き詰めるためには、上述のように数値計算の改良を行うとともに、POLAR2などの将来の偏光観測計画によってもたらされると期待される、より精度の高い観測結果との比較を行うことが望まれます。
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