研究課題/領域番号 |
16K21632
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
新津 甲大 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 特別研究員 (90733890)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 逆位相界面 / 界面偏析 / HAADF-STEM / 規則度 / ホイスラー合金 / 欠陥 / 原子分解能 |
研究実績の概要 |
本研究「マトリクスと異なる磁性を有する欠陥とそれを利用した新たな機能性の創出」の研究対象の欠陥の一つとして逆位相界面(APB)が挙げられる。メタ磁性形状記憶合金として知られるNi基ホイスラー合金ではAPBで反強磁性を取ることが知られており、その起源として、APBにおける原子配列規則度の局所的な落ち込みが関連していると考えられている。本年度はこのAPBにおける反強磁性発現の起源としての原子配列の局所変調およびそれに伴う界面偏析の評価を、主にHAADF-STEM(High Angle Annular Dark-Field Scanning Transmission Electron Microscopy)法を用いた原子分解能観察によって行った。APB領域を含む視野の原子像を取得し、規則格子周期成分などに対しフーリエ変換法に基づく画像処理を行い、複数の解析像を得た。これらの画像における原子カラム位置の積分強度を多重フィッティングにより解析的に算出し、この値の相対変化からAPB近傍での局所的な偏析および規則度の落ち込みを明らかにした。偏析の起源および大きさについては、それぞれ熱力学解析、EDS(エネルギー分散型X線分光器)による元素分析により別途評価しており、Ni50Mn20In30ホイスラー合金において2-3at.%のIn偏析(Mn欠乏)であること、その起源としてAPBにおける自由エネルギーの相対的な不安定化が原因であることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は欠陥の基礎学理の深化に資する研究に注力したが、これまで明らかにされてこなかった逆位相界面での偏析および原子規則度の落ち込みを原子分解能で明らかにすることに成功した。この研究成果は論文一報に纏めており、また主要データが日本金属学会金属組織写真賞にて優秀賞を受賞している。
|
今後の研究の推進方策 |
研究は当初の計画以上に進展している。今後は機能性創出に向け、合金設計・電子線ホログラフィーに磁場解析などに注力して取り組んでいく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
試料作製が当初の予定より順調に進み出張日数を減らすことができたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究が当初の計画より順調に進んでいるため、次年度は成果発表に多く想定以上の経費を見込んでいる。次年度使用額は新たに計画している学会参加費に充てる予定である。
|