研究課題
本年度は(i)欠陥内の磁性のみならず、(ii)FeやNiなどといった純元素強磁性体に導入される磁壁内のスピンテクスチャについて新たな知見を得ることができた。(i)については、Ga添加したNdFeB磁石内における粒界相の相同定と磁性測定を主に電子線ホログラフィーを用い解析した。その結果、3種類の粒界相が存在すること、またいずれも有意な自発磁化を持たない磁性状態であることが明らかになった。これは、同材料の保磁力改善や組織設計について非常に有用な知見であり、大きな工学上の波及効果が見込まれる成果となった。またNiMnInホイスラー強磁性合金における逆位相界面では局所的に反強磁性的スピンテクスチャを有し、その結果磁壁が重畳しやすいことを突き止めたが、このAPB磁壁の規則・不規則温度が材料自体のキュリー温度よりも低いことがわかった。これは偏狭領域に閉じ込められることにより不安定化された結果であり、APB磁壁幅から算出されるキュリー温度と良い一致を示すことが分かった。(ii)については純元素であるFeやNiの180度磁壁幅と内部スピンテクスチャの解析を通し、磁壁構造の温度依存性を説明する上で静磁エネルギーの考慮が高温になるほど重要になることを見出した。磁壁幅の温度依存性の物理的記述には交換スティフネスなど実験決定の難しいパラメータが含まれているが、この関係の詳細はこれまで理論のみに頼っていた。他方で実際に観察される環境は薄膜などといった形状異方性を有する場合がほとんどであり、このため実験環境で観察される磁壁に対しては理論式が良い近似を与えないことが本研究から明らかになった。このような基本的な材料における基礎的知見は、学理深化の上で不可欠な研究成果である。
1: 当初の計画以上に進展している
欠陥内の磁性の評価を計画通りに行うことができており、またそこから波及する研究にもさらなる展開が見込まれる。すでにいくつかの研究成果については発表・論文化できており、次年度にかけて更なる成果が見込まれる。
順調に研究遂行できており、本年度は更なる研究成果が見込まれる。成果の着実な論文化と、新しい萌芽的研究への展開を目指す。
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