研究課題/領域番号 |
16K21633
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小出 直史 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, 研究員 (40714126)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 蛍光異方性 / 不凍タンパク質 / 網膜 / 細胞保存 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、再生医療の臨床応用とその普及・標準化に向けて重要な課題となる「細胞保存技術」のソリューション開発である。臨床用途の特定細胞加工物を保存する際には、生存率だけでなく細胞機能が担保されている事が非常に重要である。一方で、細胞機能を非接触かつ非侵襲的に定量する技術はほとんど存在しない。そのため、保存前後の細胞機能を定量する技術を通して、保存技術のPOCを取得する基盤技術の開発を試みる。 本年の成果として、【①蛍光異方性を用いた新規機能解析系】蛍光異方性による細胞内温度変化のモニタリングを目指して、様々な温度下における蛍光タンパク質(GFP)懸濁液の蛍光異方性を蛍光プレートリーダーを用いて評価し、その定量性を確認した。しかしながら、3次元網膜など細胞内に発現する蛍光タンパク質では強度や定量性に課題があることもわかり現在その解決に向けて検討を進めている。【②不凍タンパク質を用いた冷却保存法】RPE細胞、RPEシートあるいは3次元網膜について、いくつかの温度に暴露した際の細胞生存率や細胞状態の変化を検証した。細胞種あるいは形状によって影響が観察される温度帯に違いがある事がわかってきた。一方、不凍タンパク質については当初溶解度の課題があったが、精製方法の改良等を進める事で溶解度を一定以上に引き上げる事に成功している。次年度は、蛍光異方性の応用に向けた検証と低温時の細胞状況の詳細検討を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断している。 【①蛍光異方性を用いた新規機能解析系】 蛍光タンパク質の温度依存的な蛍光異方性については定量的なデータが得られている一方で、細胞(特に3次元網膜など立体構造を有するもの)については線形データが得られにくい状況になった。解析プログラムを改良する事で解決可能なのかなどいくつか検証を進めている。当初計画では、細胞温度変化検出は次年度の課題のため、現状は順調な進行と判断している。 【②不凍タンパク質を用いた冷却保存方法】 再生医療用網膜組織(RPE細胞、RPEシート、3次元網膜)について、低温暴露時の細胞状態の変化を検出した結果、細胞種あるいは構造によって違いがある事がわかってきた。責任遺伝子の探索は完了していないもののいくつか候補は挙げられている。また、当初予期していなかった不凍タンパク質の溶解度の問題については精製方法の改変等を通して解決した為次年度予定している保護効果の検証準備は整っている。
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今後の研究の推進方策 |
【①蛍光異方性を用いた新規機能解析系】本年度蛍光タンパク質懸濁液を用いた線形の定量データを取得する事ができたが、細胞内蛍光タンパク質を定量的に線形データを取得することまでは達成できていない。そのため、次年度は解析プログラムの改良などを通して、細胞内蛍光タンパク質について温度変化依存した線形データを取得する為の系の確立を目指す。 【②不凍タンパク質を用いた冷却保存方法】 低温暴露時に再生医療用網膜組織(RPE細胞、RPEシート、3次元網膜)がどういった影響を受けるのかを遺伝子レベルでの検証を行う。また、低温暴露誘導性の細胞傷害に関わる遺伝子群を絞りこみ、細胞傷害マーカ―としながら保護効果の効果検証へ応用する基盤を整える。 不凍タンパク質の溶解度の課題を克服できたため、低温暴露時の不凍タンパク質の保護効果について検証を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
【②不凍タンパクを用いた冷却保存法】について、再生医療用網膜組織として、RPE細胞、RPEシート、3次元網膜と細胞種類を増やしたために、詳細検討の為の網羅的遺伝子発現プロファイル解析を実施しなかったため使用額の差異が生じた。次年度以降、低温暴露時における網羅的遺伝子プロファイル解析を進める予定にしている。
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次年度使用額の使用計画 |
低温暴露時における本年度実施しなかった網羅的遺伝子プロファイル解析については、次年度以降実施・検証を進める予定にしている。
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