研究課題/領域番号 |
16K21637
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
田島 英朗 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 計測・線量評価部, 研究員(任常) (70572907)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | PET / 脳PET / ヘルメットPET / 認知症 / アルツハイマー / 診断装置 / 頭部専用PET |
研究実績の概要 |
頭部専用のPET装置であるヘルメットPET装置では、ヘルメット部として頭の形状に合わせたコンパクトな半球状に検出器を配置することによって、頭頂部の感度を大幅に高めることが可能であるのに加え、ヘルメット部以外に追加検出器を配置することで、ヘルメット部だけでは低くなっていた中央部の感度を効率的に高めることが可能である。PET測定において定量測定を行うためには、生体によるガンマ線の減弱を考慮する必要があり、減弱係数の分布を表す減弱マップ、またはPET測定データへの影響度合いを表す減弱補正係数を取得する必要があるが、コンパクトな頭部専用装置に対して、一般的に用いられている減弱補正係数取得のための機構を組み込むことは困難であるため、現状では、別途撮影したCT画像やMRI画像を用いる方法が検討されている。それに対して本研究では、コンパクトな頭部専用装置に対しても組み込みが可能な、シンプルな構成で減弱補正係数を同時推定可能な新しいシステムの検討を行い、シミュレーションによって有効性を確認した。具体的には、これまでは主に全身用PET装置で検討されてきた、PET薬剤分布と減弱補正係数の同時推定法の頭部専用装置への適用可能性を確認した。その際、従来の研究では、PET薬剤分布の視野内の総量などを拘束条件としていたが、実際の測定ではその情報は取得することが困難であるため、視野内に既知の固定点線源を配置することで特定方向の減弱補正係数のみ取得可能なシステムを提案し、一方向のみ減弱補正係数が既知であることを拘束条件とした。そして、検出器のTOF(Time-of-Flight:飛行時間差)情報の精度を変えながら推定誤差を評価した結果、280ps程度の時間分解能があれば、頭部サイズにおいても、減弱補正係数を十分な精度で推定可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎検討として、まず2DのPET薬剤分布・減弱補正係数同時推定法の開発、及びシミュレーションソフトの実装を進め、TOF情報の利用が同時推定法において重要な役割を果たしていることを確認し、高い時間分解能のPET検出器を用いることで、減弱補正係数を十分な精度で推定可能なことを示した。一方で、ヘルメットPETのジオメトリを構成可能な3次元のモンテカルロシミュレーションソフトウェアの開発も同時に進めており、頭部専用装置としての感度やイメージング性能などの最適化をモンテカルロシミュレーションによって行った。TOFに対応したリストモード画像再構成法の開発やGPUによる高速化にも着手しており、概ね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
モンテカルロシミュレーションによって生成したPET測定データをもとに提案手法を適用し、3次元データに対しても提案手法が有効であることの検証を行う。これまでに、PET薬剤分布と減弱補正係数の同時推定法の検討を行ったが、PET薬剤分布と減弱マップの同時推定法の開発を行い、それぞれの利点・欠点の比較、及び精度の検証を行う。また、視野内に配置した固定点線源と、被験者からのガンマ線とを識別できるかどうかの検討を、近年開発された高速なTOF-PET検出器であるMPPC(Multi-Pixel Photon Counter)モジュールを用いて行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
初期の計画では、NVIDIA社製GTX 1080をGPUボードとして搭載した画像再構成用ワークステーションを購入する予定であったが、別予算で購入することができたため、本予算では、次年度に発売されるより高性能で信頼性の高いGPUボードを搭載した画像再構成ワークステーションを調達するように計画を変更した。
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次年度使用額の使用計画 |
医療機器としての規格に準拠することが可能なGPUボードとしてNVIDIA社製のQUADRO P5000、またはQUADRO P6000を搭載した画像再構成ワークステーションを調達する。
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