研究課題/領域番号 |
16K21637
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
田島 英朗 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, その他部局等, 研究員 (70572907)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | PET / 脳PET / ヘルメットPET / 認知症 / アルツハイマー / 同時推定法 / 頭部専用PET / モンテカルロシミュレーション |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度ノイズフリーで行った放射能分布・減弱係数分布同時推定手法であるMLACF(Maximum Likelihood Attenuation Correction Factor)法の頭部専用PETへの適用可能性検討に引き続き、統計的なノイズを測定データのであるサイノグラムに加えた検討を2次元画像にて行った。その結果、サイノグラムの空間的な連続性を先見情報として用いることで、推定精度が向上することを示した。また、サイノグラム上のノイズレベルが20~25%の場合には、280ps程度以上の時間分解能を有するTOF(Time of Flight:飛行時間差)検出器を用いれば十分であることが示された。 また、より現実的な状況での検討を行うために、モンテカルロシミュレーションのツールであるGeant4を用いて、TOF検出器を用いたヘルメット型PET装置の模擬が可能なソフトウェアを開発した。その際、検出器の位置を平易な設定ファイル一つで任意に配置できるようにした。その結果、放医研独自方式の4層DOI検出器を用いてこれまでに開発した径の異なる検出器リング配置のヘルメット型PET装置のほか、全ての検出器が中心に向いた球面配置の装置の模擬など、より効率的な配置を検討することがこれまでと比べて容易にできるようになった。さらに、画像再構成にも同じ設定ファイルを使用できるように、画像再構成法とそのソフトウェアを開発した結果、モンテカルロシミュレーションから画像再構成までを複雑な検出器配置でも容易に実施可能なイメージングシミュレーションフレームワークが完成した。その際、散乱補正に必要な散乱推定は、従来方を直接適用することが困難であったため、モンテカルロシミュレーション結果と一致するように独自の方法で実装を行った。その結果、任意検出器配置のPETデータを精度良く画像再構成することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
モンテカルロ法を用いたイメージングシミュレーションフレームワークの開発にあたり、散乱補正のために必要な散乱推定法としてこれまでに開発していた手法をそのまま適用しようとしたが、モンテカルロ法と実際に比較してみると大きな誤差があることが発覚した。主な原因は、ヘルメット型PET装置のように視野に検出器が非常に近い場合、これまでの実装方法では無視できていた計算誤差が、無視できないほど大きくなっていたことであった。またTOF情報を考慮した散乱線推定法も新たに実装する必要があった。そのため、改めての文献調査や試行錯誤を繰り返し、近接配置のヘルメット型PET装置においても高い精度で散乱推定が可能な手法を開発した。この開発に当初の予想よりも時間がかかったため、3次元の同時推定手法の開発着手に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
開発したイメージングシミュレーションフレームワークにおいて3次元の同時推定手法を追加実装し、提案手法の有効性の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画よりも画像再構成ソフトウェアの開発に要する期間が長くなってしまったため、研究実施期間を延長し、開発したソフトを用いた検討、及びTOF検出器を用いた測定実験を次年度に繰り越した。そのため、次年度の検討や実験に必要な経費として使用する。
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