研究課題/領域番号 |
16K21644
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
関 好孝 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 外来研究員 (00733213)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リキッドバイオプシー / 血中循環細胞外DNA / ドライバー遺伝子変異 / 肺がん / チロシンキナーゼ阻害剤 / 耐性化克服 |
研究実績の概要 |
当グループでは血漿中のcell-free DNA(cfDNA)を用いたEGFR遺伝子変異の定量的解析法、及びALK、ROS1、RETの融合遺伝子の解析によるゲノムDNA上のbreakpoints好発部位を報告している。EGFRのT790M点変異は、EGFR-TKI治療耐性要因の約40%を占めると報告され、治療標的としても注目されている。しかし、耐性獲得時の腫瘍再生検は実地臨床では侵襲が大きく、耐性機序判定としては全例での実施は困難であるため、低侵襲なリキッドバイオプシー法としてcfDNA解析の研究が進んでいる。当グループでのdigital PCR法を用いた研究では、EGFR-TKI治療耐性化後の患者血漿中のcfDNA中では感受性変異は9割以上で検出が可能であり、T790M点変異率の評価も可能であった(Y.Seki, et al. The Oncologist, in press)。これにより、世界中で開発が進んでいるT790M標的治療の有効性を数値化できると考え、現在も検体収集、解析を継続している。 この解析技術とbreakpointsの座標情報を応用し、ゲノムDNAからの検出が困難とされているEML4-ALK融合遺伝子変異につき、次世代シークエンサーを用いたcfDNA解析での定量的解析を目指す。さらに、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)での感受性融合変異と耐性変異の比率を算出することで、TKIの治療効果バイオマーカーとして応用可能か明らかにする。 また同様に、RET・ROS1などの融合遺伝子変異など、新たに特定されたドライバー遺伝子変異についても、血漿cfDNAを用い、TKI耐性化後の感受性/耐性変異を新規ゲノムDNA濃縮法を用いたNGS解析を用いて定量し、変異比率の算出と耐性機序判定の臨床応用が可能となるよう開発する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当グループはSequence Capture法を用いたゲノムDNAからのALK、ROS1、RETの融合遺伝子のDNA切断の好発部位を特定している(Y.Seki,et al. Biomolecules.2015)。 この座標情報を利用し、新規ゲノムDNA濃縮法(Single Primer Enrichment Technology)を用いたカスタムパネルを既に作製し、がん細胞株DNAを用いたライブラリー精製法を試用し、EML4ーALK融合遺伝子を持つ肺がん細胞株のDNA切断部位を特定した。現在はプライマーキットの調整を行っており、正常遺伝子と融合遺伝子の定量実験を行う準備段階にある。プライマーキットは高価であり、また臨床検体も限りがあるため、より正確かつ効率的な定量ができるキットへ調整するため、慎重な予備検討を実施する必要があり予定よりはやや準備期間が多く必要であると考えられる。 さらに細胞株での定量実験の後、収集した患者検体での遺伝子変異定量実験を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在はプライマーキットの調整を行っており、正常遺伝子と融合遺伝子の定量実験を行う準備段階にある。すでにDNA切断部位をまたいだプライマーセットでのPCRに成功しており、定量実験のためのプライマー・プローブのキットの調整を慎重に進めている。 さらに細胞株での定量実験の後、収集した患者検体での遺伝子変異定量実験を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用予定のプライマーキットの予備検討の延長が必要であり、発注が29年度に変更になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
プライマーキットの購入およびピペットチップ・チューブなどの実験消耗品の購入など
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