研究課題/領域番号 |
16K21645
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
野中 美希 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 特任研究員 (60758077)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | がん悪液質 / グレリン / デスアシルグレリン / 心機能 / cardio-oncology |
研究実績の概要 |
悪液質は、食欲不振、体重減少、脂肪・筋肉組織の消耗、全身衰弱、倦怠感を特徴とし、がん、慢性心不全、慢性障害肺疾患、慢性腎疾患といった疾患に認められる進行性消耗状態である。慢性心不全患者においては 5-15%、進行がん患者では約80%にみられ、がん死因の約20%を占める。悪液質は患者のQOL低下を招き、生命予後にも影響するため、その改善は喫緊であるが治療法は未だ確立されていない。当研究分野ではヒト胃がん細胞株85As2をラットまたはマウスの皮下に移植することにより、摂食量低下、体重減少、筋肉量減少を伴う除脂肪量低下など、ヒトと同様のがん悪液質症状を呈する動物モデルを確立した。がん悪液質の病態下では心不全を起こすことが知られているが、同モデルを用いた心機能評価は行われていない。そこで本研究では、がん悪液質時の心機能評価を行い、心臓悪液質改善効果ならびにがん悪液質改善効果を示すグレリンが、85As2誘発がん悪液質モデルの心機能に与える影響について詳細に検討し、心機能改善を目指した新規悪液質治療法開発のための基盤データを蓄積することを目的とした。さらに、グレリンのアシル化修飾を受けていないデスアシルグレリンのがん悪液質時の心機能への影響についても併せて検討する。その目的のために(1)ヒト胃がん細胞株85As2誘発がん悪液質モデルの心機能評価、(2)同モデルへの摂食亢進ホルモングレリンとグレリンのアシル化修飾のないデスアシグレリンの心機能への効果、(3)同モデルの心筋細胞レベルでの心機能解析、ならびにグレリン、デスアシルグレリンの作用機序の解明を行うこととした。本年度は1)を行った。マウスにヒト胃がん細胞株85As2を移植することにより、進行性の悪液質症状(体重減少、骨格筋量の低下さらに心重量の低下)が認められた。また、心エコーによる心機能評価を行ったところ心機能の低下が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で使用する動物モデルの作製には、ヒトのがん患者から樹立した細胞株を使用すること、また本実験が動物の苦痛を回避できない実験であることから、動物倫理審査委員会の申請許可が下りるまでに時間がかかったため、すぐに実験を始めることができなかった。そのため、実験がやや遅れている。現在、引き続き85As2誘発がん悪液質モデルの悪液質症状ならびに心機能に対する病態表現型の確認を行っており、2)~3)の項目についても準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
85As2誘発がん悪液質モデルの悪液質症状ならびに心機能に対する病態表現型に関する知見を初めて見出すことができた。今後実験データを十分に集積し、その後心機能に対するグレリン、デスアシルグレリンの改善効果についても慎重に解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験開始が予定より遅れたことから、年度末までに使用する予定であったものが年度をまたいでしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度予定の実験に送球に充当させ、翌年分の助成金と合わせて本研究計画を着実に遂行するために適正に使用する。
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