研究課題
がん悪液質は進行がん患者の約80%に出現し、がん死因の約20%を占める。近年、がん悪液質は心不全を発症することが報告されており、心機能とがんの予後との相関など、がんと心臓との関係が注目されている。しかしながら、ヒトと同様のがん悪液質を発症する適切なモデル動物が少ないため、がん悪液質と心機能との関連について検討した基礎医学研究は未だ十分とはいえない。我々は当分野で樹立したヒト胃がん細胞株を移植することにより、ヒト患者で惹起される食欲不振や体重減少などの悪液質症状を示す新規がん悪液質モデルマウスを確立した。本研究では、このがん悪液質モデルマウスの心機能を評価するとともに、がん悪液質性心機能障害に対する治療薬の開発を目指した研究を行った。ヒト胃がん細胞由来85As2細胞を8週齢の雄のBALB/c nu/nuマウスの両腹皮下に移植し、移植後2週目から悪液質の指標となる体重、骨格筋重量、ならびに食餌摂取量等の減少を示すモデルを作製した。本研究では移植後2週目を前悪液質群、移植後8週目を悪液質群と定義し、それぞれの群に対する同週齢対照群と比較することにより、心機能を中心とした悪液質症状を検討した。同齢の対照群と比較し、前悪液質群ならびに悪液質群では心重量が有意に減少し、特に悪液質群では減少が顕著であった。左室駆出率についても前悪液質群、悪液質群でいずれも有意に減少していた。一方、筋肉量低下や萎縮に関与するユビキチンリガーゼAtrogin-1、MuRF-1発現量は骨格筋において顕著に上昇しているのに対し、心筋においては骨格筋ほどの上昇は認められなかった。以上よりがん悪液質による骨格筋ならびに心筋の萎縮は異なる経路で惹起されている可能性が示唆された。加えて85As2細胞を移植したがん悪液質モデルマウスは心機能障害を伴っていることが明らかとなった。
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