研究課題/領域番号 |
16K21654
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
小林 俊彦 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 副プロジェクト長 (40613203)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リソソーム / マスト細胞 / 炎症 |
研究実績の概要 |
免疫細胞の中でも、マスト細胞やNK細胞といった細胞種は、それぞれヒスタミン顆粒や細胞傷害性顆粒として知られる分泌リソソームを機能分化させているが、これら細胞のエフェクター機能の発揮において、リソソーム環境に依存した制御機構に着眼した研究はほとんど行われていない。本研究では、マスト細胞の機能制御におけるリソソーム環境管理の重要性とそのメカニズムを理解するために、リソソームに発現するアミノ酸トランスポーターのSLC15A4を解析モデルとし、SLC15A4遺伝子欠損マウスを用いてマスト細胞のリソソーム性状と炎症応答の解析およびアレルギー炎症モデルの病態解析を行った。その結果、SLC15A4欠損マスト細胞におけるリソソームの形態異常、およびヒスタミン合成亢進、またそれに伴ったIgE-抗原刺激によるマスト細胞の脱顆粒時のヒスタミン放出量の増加を見出し、SLC15A4がマスト細胞のリソソーム生合成とヒスタミン等の炎症メディエーターの合成/細胞内貯蔵に重要な役割を果たしていることを明らかとした。 また、リソソーム環境管理におけるSLC15A3とSLC15A4との機能の差異および類似点を明らかにすることを目的として、SLC15A4と性質の類似するSLC15A3の欠損マウスを作出した。さらにこのマウスをSLC15A4欠損マウスとかけ合わせることでSLC15A3/SLC15A4二重欠損マウスを作出し、これらのマウスの表現型について解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、マスト細胞の機能制御におけるリソソーム環境管理の重要性とそのメカニズムを理解するために、リソソームに発現するアミノ酸トランスポーターSLC15A4の遺伝子欠損マウスを用いてマスト細胞のリソソーム性状と炎症応答の解析およびアレルギー炎症モデルの病態解析を行った。その結果、SLC15A4がマスト細胞の正常なリソソーム生合成とヒスタミンをはじめとする炎症メディエーターの合成/細胞内貯蔵を制御することで、IgEを介した脱顆粒反応に伴うメディエーター放出を調節していることを明らかにした。これらの成果をまとめ、海外学会において発表済、また現在論文を投稿中である。一方、SLC15A4と性質の類似するSLC15A3の欠損マウスをCRISPR/Cas9システムを用いて作出し、その表現型解析を進めるなど、当初の2年度に計画していた研究内容を一部前倒しして行っている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の2年度の計画にある通り、作出したSLC15A3 KOおよびSLC15A3/SLC15A4 ダブルKOマウスの解析を行い、リソソームおよび関連オルガネラの形態、アレルギー炎症応答について検討を加える。これらの解析により、炎症シグナルの場であるリソソームの空間的制御にSLC15A3/SLC15A4が果たす役割を明確にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2回の海外学会発表にかかる費用が、それぞれGordon Research ConferenceにおいてはConferenceからの支援、16th International Congress of Immunologyにおいては所属学会(日本免疫学会)のtravel bursaryにより充当されたため、費用の節約につながった。
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次年度使用額の使用計画 |
世の中の流れで漸次値上げされている消耗品(試薬、抗体、マウス)などの物品費の費用増加分のほか、SLC15A3に関する論文の投稿費用に充てる。
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