研究実績の概要 |
本研究では、マスト細胞に特徴的な分泌リソソーム内のアミノ酸およびプロトン環境がマスト細胞の機能と個体免疫応答にどのような影響を及ぼすかを理解し、マスト細胞が媒介する炎症性疾患の新規制御機構を明らかにすることによって、アレルギー性疾患をはじめとする炎症性疾患の新規治療法の開発の礎となる分子基盤を構築することを目標とした。具体的には、①マスト細胞においてSLC15A4 を介したリソソームに依存したシグナル伝達の重要性、②アミノ酸トランスポーターSLC15A4 によるリソソーム環境管理がマスト細胞の機能に果たす役割、について明らかにした。すなわち、SLC15A4欠損マスト細胞におけるリソソームの形態異常、およびヒスタミン合成亢進、またそれに伴ったIgE-抗原刺激によるマスト細胞の脱顆粒時のヒスタミン放出量の増加を見出した。その分子メカニズムとして、SLC15A4がmTORC経路および転写因子TFEBの活性化制御を介してマスト細胞のリソソーム生合成とヒスタミン等の炎症メディエーターの合成/細胞内貯蔵に重要な役割を果たしていることを明らかとした。これらの成果を論文にまとめて、International Immunology 誌(Int Immunol. Vol. 29, No.12, p551-566)に発表した。 また、リソソーム環境管理におけるSLC15A3とSLC15A4との機能の差異および類似点を明らかにすることを目的として、SLC15A3の欠損マウスを作出し、SLC15A3欠損細胞の機能解析を行なった。SLC15A3欠損マスト細胞では、SLC15A4同様の表現型が得られなかったことから、これら分子の役割機能が異なることが示唆された。
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