研究課題/領域番号 |
16K21657
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
元村 祐貴 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神生理研究部, 特別研究員 (50645273)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 潅流スピンラベリング / 日周嗜好性 / 生体リズム / 過覚醒 / fMRI |
研究実績の概要 |
ヒトの生体リズム機構は地球の明暗環境のリズム(昼夜)に適応して発達してきたものであると考えられているが、人工照明の発明により急速に24時間型となった現代社会では、生体リズム周期と実際の睡眠覚醒リズムが一致しない中で生活しなければならない機会が増加している。人体がその生活スタイルに急速に適応できるはずもなく、概日リズムのずれが事故の発生や心身の健康への負担などの要因となっている。例えば、居眠りによる交通事故は眠気が最大となる午後4~5時付近で交通量当たりの発生率が最も高い。また本来は寝ているはずの、生体リズム上の体温の最低点付近でも起きたまま仕事をしなければならない夜勤、交替勤務者は強い眠気や気分の悪化を訴え、さらには長期勤続者の気分障害への罹患率が三割近くにもなることが報告されている。また生体リズム機構の表現型の一つと考えられる日周嗜好性に関しても、気分調節機能や認知機能とのかかわりが指摘されている。このように精神機能に多大な影響を及ぼすにもかかわらず、生体リズム機構と実際の脳活動との関連についてMRIを用いて検討した研究は少なく、その詳細は明らかにされていない。 本研究では、潅流スピンラベリングを用いてヒトの生体リズム機構と脳活動の関連について調査することを目的とした。潅流スピンラベリング法は頸部の血流に反転磁化パルスを照射し、ラベリングした血液の動態を取得することによって脳血流の絶対量を測ることが出来る。今年度は安静時潅流スピンラベリング画像の測定と、個人の生体リズムを反映する日周指向性の測定を実施し、生体リズムと脳の血流量との関連を検討することを目的とした。健常者42名に対して、安静時潅流スピンラベリングの測定と、日周嗜好性を測る質問紙(MEQ)の測定を実施した。今後は測定データの解析を行い、生体リズムと脳血流の関連について調査していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MRI実験を実施して42名のfMRIデータを取得し、統計解析に十分なサンプルを収集することができた。よって研究が順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は取得したデータを解析し、国内外での学会発表や論文投稿に向けてデータをまとめる作業に入る。覚醒機能(視床、毛様体賦活系)、認知機能(前頭前野)、情動機能(偏桃体、島皮質)にかかわる脳領域の活動との関連をみるため、個人の日周嗜好性との相関解析を実施し、それぞれの機能と生体リズム機構との関連性を明らかにしていくことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた高額の測定機器のデータの信頼性が本研究に必要なレベルに到達しない可能性があることが明らかになり、購入を見送った。また所属研究施設で実施された他の睡眠実験とデータを共有することにより、予定していた被験者謝金分の助成金の使用が減額された。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額の使用用途としては、研究機関異動により新たな解析環境を構築することが必要となったため、MRIデータ解析用の高スペックの解析用PC,PCの周辺機器、大容量データ保存用ネットワークディスク、プログラミング用ソフトウェア等の購入のために補てんする予定である。
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