偽性副甲状腺機能低下症(以下、PHP)はPTH標的組織におけるPTH抵抗性に特徴づけられる疾患で、組織特異的インプリンティングがおきる組織(腎近位尿細管、甲状腺、下垂体、性腺)でGsα発現異常により引き起こされる。しかし、GNAS領域のメチル化異常を来す機序は不明である。今回、PHP発症機序の解明を行うため、PHP症例を集積して新たに28症例の分子遺伝学的要因を同定することができた。症例を集積する中で、A/B単独の軽度低メチル化を来すPHP1bの兄妹例を同定した。その分子遺伝学的要因を同定するため、マイクロアレイやMLPAを行ったが、過去に報告されているような明らかなコピー数異常は確認できなかった。しかし、全ゲノムシークエンス解析を行ったところ、XLASとA/Bの間に、明らかなdepth異常を認め、depthの異常が見られる領域に限定して、リファレンス配列にマッピングされなかったリードを集積して、de novoアセンブリを行ったところ、およそ1100bpの挿入配列が存在することが想定された。 更に、サンガー法を行ったところ、挿入配列はレトロトランスポゾン由来のSINA/Aluの配列に一致する配列であることが判明した。レトトロトランスポゾン挿入がメチル化異常を来す機序を解明するため、患者血液由来mRNAを用いて、ドロップレットデジタルPCRを用いた発現解析を行った結果、NESP55の発現低下傾向があることが想定された。しかし、血液での発現量が少ないことから明らかな発現異常を確認できず、今後、RNA-Seq解析で遺伝子発現の詳細な解析を行う予定である。
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