本研究は、極低出生体重児における低亜鉛血症の病態を明らかにし、栄養管理の適正化を図るための基礎的知見の蓄積を目的として計画した。 計画当初、亜鉛の補充が行われている児と補充されていない児で血清亜鉛濃度の推移を比較する予定であったが、計画を見直す中で、極低出生体重児に対する医療管理は非常にきめ細やかに行われており、亜鉛の補充の有無と血清亜鉛濃度の関連性のみを独立して評価することは困難だとわかった。 そこで、本研究は、ベースラインとなる情報収集に主眼をおくことに変更し、亜鉛の補充が行われていない極低出生体重児を対象に、血清亜鉛濃度およびその他の微量元素濃度の推移を評価することにした。 2018年度は新生児科医とNICUの看護師のサポートを得て、32名の極低出生体重児をエントリーした。出生時(臍帯血)、日齢7、日齢30、修正週数35週、修正週数40週にて採血とと母乳を収集し、マグネシウム、リン、カルシウム、クロム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、セレン、モリブデンの濃度をICP-MSを用いて測定した。 血液中の微量元素濃度は、出生時(臍帯血)に比して経時的に、鉄、亜鉛、マンガンは低下する傾向を示し、マグネシウム、リン、カルシウム、銅は緩やかな上昇の傾向を示した。セレンは日齢7時点では低下するが、日齢30では出生時にまで回復する傾向を示した。母乳中の微量元素濃度は、いずれの微量元素も日齢7時点から日齢30時点にかけて低下傾向を示した。 現在、経口と経静脈的投与を合わせた総摂取量と血液中濃度の関連、母乳のみと人工調整ミルクと母乳の併用での比較、AGAとSGAでの比較を行っている。2019年度内に論文として報告できる見込みである。
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