研究課題/領域番号 |
16K21669
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
越智 真奈美 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 社会医学研究部, (非)研究員 (00749236)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 健康の社会的決定要因 / 食習慣 / 食育 / 野菜摂取 / 肥満 / ライフコース / 貧困 / 自治体 |
研究実績の概要 |
生涯を通じた生活習慣病予防の観点から、小児期は健康的な食習慣形成に重要な時期とされる。しかし小児の食習慣に関する介入プログラムについて、肥満予防などの長期的な効果は検証されていない。本研究では、都内A区における野菜摂取に特化した食習慣変容を促す施策について、小児期の食習慣の定着および肥満予防の観点から、その長期的効果の定量化を目的とした。 本年度は、1)区内保育施設における野菜摂取指導の実態と普及状況の把握、また2)平成27年度より開始した、区立小学生を対象とした悉皆的縦断調査を継続し、子どもの食習慣形成に影響する世帯・地域における要因の同定を中心に研究を進めた。1)では、区立および公設民営保育園の全51園に通う3歳児から5歳児クラスの保護者にアンケート調査を実施し(有効回答票2898件、回収率86%)、さらにこのうちの7園の保護者より、より詳細な親子の食習慣と生活習慣、および簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)の回答協力を得た(有効回答票135件、回収率82%)。これらの結果から、区で実施している野菜摂取推進事業について、昨年度からの保護者の認知割合の変化を確認した。また食事のひと口目を野菜から食べている園児や、家で料理の手伝いをする機会が多い園児は、野菜摂取量が多く肥満傾向も抑えられる可能性があることを明らかにした。2)では無記名アンケート方式により、区立小学校に在籍する全小学2年生を対象に学校を通じて質問票の配付・回収を行った(有効回答票4583件、回答率81%)。質問票データを学校健康診断による身長や体重、歯科検診情報を突合し、調査対象世帯の生活困難状況別に、児童の野菜摂取をはじめとする食生活や生活習慣、肥満傾向などの健康状態が異なる実態を明らかにした。集計や詳細な報告は、A区の公的な報告書の一部として公開された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である本年度は、当初の研究計画通り、調査協力自治体であるA区保育施設での野菜摂取指導の実態把握と食事調査、並びに区立小学校2年生を対象とした悉皆的健康・生活調査を実施し、データ集計結果の自治体への報告に至った。 成果の一部を各学会等で発表し、関連する原著論文は現在2編投稿中であり、その他数編を執筆中である。次年度の縦断的調査に関する準備を順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに得た調査データの解析をさらに進め、調査協力自治体の今後の施策として資する結果を自治体と共有し、関連団体や区民への報告会を開催する。また成果については引き続き学会発表、論文出版を進める。 次年度は、研究計画当初は本年度に行う予定であった、区立小学校1年生全員を対象とする健康・生活実態調査を実施する。この調査データを、本年度行った保育園児を対象とした調査データと突合することにより、保育園における食習慣指導を受けた児童と受けていない児童を含む経年データを作成でき、各群を比較することで、未就学児期の食習慣指導の効果を検証する。 区立保育園における食事調査は、質問内容を改良の上で本年度と同様に実施し、A区における食習慣指導の取り組みの普及や、保護者と園児の食習慣への効果についてフィードバックする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度実施した保育園児のデータと突合可能な経年データとするため、研究協力自治体との調整を行い、本年度に行う予定であった区立小学校1年生全員を対象とした調査を次年度へ繰り越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
1.論文出版のための英文校正費、投稿費用として使用する。 2.調査協力自治体における区立小学校1年生全員を対象とした健康・生活実態調査実施のため、印刷費や旅費、データ入力などの諸経費として使用する。 3.調査協力自治体の区立・公設民営保育園に通う園児を対象とした食事調査の継続のため、郵送費や旅費、データ入力などの諸経費として使用する。
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