本年度は試作した参照インピーダンス標準器(抵抗値0.6 Ω)の不確かさ(精度)評価を行った。不確かさの主要因と考えられる経時変化および周囲温度変化に起因した参照インピーダンス標準器の不確かさを、ISOのガイドに従って評価した。 経時変化に起因した不確かさの評価では、参照インピーダンス標準器の周囲温度を一定(23度)に管理した状態で直流抵抗値の時間経過に伴う変化を長期間に渡って測定し、抵抗値の変化の割合(抵抗変化率)を推定した。推定した抵抗変化率を基に、参照インピーダンス標準器を用いて電気化学インピーダンス測定器の校正を行う際の経時変化に起因した拡張不確かさ(95 %の信頼区間)を5.9 ppmと評価した(参照インピーダンス標準器の直流抵抗校正を開始してから電気化学インピーダンス測定器の校正が終了するまで5日間を要すると仮定した場合)。また、参照インピーダンス標準器の周囲温度を23度から26度の間で変化させながら直流抵抗値を測定し、参照インピーダンス標準器の温度特性を明らかにした。この結果から参照インピーダンス標準器の周囲温度を23度±1度に管理した場合の温度変動に起因した拡張不確かさを7.5 ppmと評価した。 本研究では、電気化学インピーダンス測定器評価の基準として利用可能な参照インピーダンス標準器を設計・試作した。そして、試作した参照インピーダンス標準器の不確かさの主要因と考えられる経時変化に起因する不確かさと温度変動に起因する不確かさをISOガイドに従い評価した。不確かさが明らかな参照インピーダンス標準器を基準に電気化学インピーダンス測定器を評価することで、電気化学インピーダンス測定器を用いたリチウムイオンバッテリー等の劣化評価結果の信頼性を確保することが可能となった。
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