研究課題
2019年度は2018年度に引き続き,統計的アプローチによる毒性予測に関する研究および,毒性評価・予測に資するスクリーニング試験方法の統計的測定精度評価に関する研究を行った.毒性予測手法の研究については,毒性発現機序(特に化合物の代謝)に示唆を与える酵素ファミリーの1つであるシトクロムP450 (P450) の阻害活性について,反復投与毒性の有無との統計的関連解析を行った.具体的には148化合物を学習データとし,18種のヒトもしくはラットP450阻害活性のパターンと肝臓・腎臓・血液関連所見での影響の有無との関連解析を行った.その結果18種のP450の阻害活性パターンは化合物により大きく異なること,また反復投与毒性のいくつかの所見での影響と関連があることが得られた.さらに毒性予測モデルの説明変数としてよく用いられる分子記述子のデータパターンと,P450阻害活性のデータパターンも大きく異ることも明らかになった.そのためP450の阻害活性は,毒性予測モデルの説明変数となり得ることが示唆された.この結果を踏まえ,今後P450阻害活性から反復投与毒性を予測する統計モデルを構築していく予定である.統計的測定精度評価に関する研究については,昨年度のISO/TC 69/SC 6名古屋総会で新規業務項目(AWI)となった「2値データに対する統計的測定精度評価手法」のガイダンス文章について執筆を進めた.6つの既存の2値データに対する統計的測定精度評価手法について方法論をサーベイし,さらに複数の同一例を各手法で解析しその結果を比較した.本成果を作業原案(WD)として,ISO/TC 69/SC 6の国際幹事に提出した.
3: やや遅れている
2018年2月より1年間研究企画室が主務であったため,研究活動のエフォートは非常に小さくならざるを得なかった.そのため本年度が最終年度の予定であったが,2020年度まで期間延長を行うことで当初予定していた研究計画を遂行していく.
2020年度は2報(うち1報は2年前に投稿し査読中の統計的測定精度評価手法に関する論文である.)について国際誌に受理されることを目指す.さらに毒性予測手法の研究については,2年前より実施しているリードアクロスアプローチによる推論手法の予測精度を高め,成果を論文としてまとめ国際誌へ投稿することを目標とする.また統計的測定精度評価に関する研究については,2値データに対する統計的測定精度評価手法のISOガイダンス文章について,各国と調整を行い次のステージに進める.
(理由)2019年度の大半は研究企画室が主務であったため,研究活動のエフォートが非常に少なくならざるを得なかった.そのため,情報収集や研究打ち合わせのための旅費等に残額が生じた.(使用計画)2020年度の研究費は,その大半を研究に必要な文献資料費,ソフトウェア費として使用する予定である.
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Toxicology and Applied Pharmacology
巻: 388 ページ: 114854
10.1016/j.taap.2019.114854
Proceedings of XIIIth International Workshop on Intelligent Statistical Quality Control 2019
巻: 13 ページ: 249-260
https://sites.google.com/view/junbow52/