研究課題
加速器中性子ビームを用いたガン治療(ホウ素中性子捕捉療法、BNCT)ではその中性子エネルギー分布に施設依存性が強く、モンテカルロ計算によるシミュレーションと合わせて実測による評価が望まれており、本研究では治療レベルの大強度中性子のエネルギー分布を精密に測定する技術を開発した。3年目である平成30年度は、治療レベルの大強度中性子(熱外中性子フラックス1e+10 /cm2/s)のエネルギー分布を直接測定できる、Liガラスシンチレーターベースのボナー球スペクトロメーター(大強度用BSS)を完成させ、その特性評価と、加速器BNCT施設における実証試験を行った。特性評価の過程では、検出素子の個体差の影響を精度良く評価するための校正ジグを製作し、ガンマ線に起因する信号の寄与の評価精度を向上させることに成功した。また、研究用原子炉において検出素子の対中性子強度リニアリティの評価を行った。特性評価の結果を踏まえ、いばらき中性子医療研究センターの加速器BNCT施設において、治療レベルの大強度中性子ビームに対する実証実験に臨んだ。大強度用BSSからは想定通りの信号電流強度が得られ、アンフォールディング解析によって中性子エネルギー分布情報を導出することに成功した。結果は概ねモンテカルロ計算によるシミュレーションで得られた予想スペクトルと整合するものであったが、より精密なエネルギー情報を得られるようにするため、引き続き大強度BSSの応答関数の評価精度の向上に取り組むとともに、エネルギー分布測定の精度が治療結果に及ぼす影響についても考察を進めていく予定である。
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