平成30年度は、国内外でのヒアリング調査を行うとともに、成果を学会報告や研究論文として公表した。 イタリアでのヒアリング調査からは、日本にとって興味深い知見が大きく4点得られた。第1に、イタリアでは里親委託と養子縁組を厳密に区別していることである。イタリアにおいて、里親とは将来的な養子縁組を視野に入れた存在ではない。あくまでも最終的な目的は2年以内に子どもと実親との家族再統合を達成することであり、それまでの間、家庭で育てられない子どもに、自身の愛情を与えて支援するのが里親であると考えられている。日本における里親と養子の線引きが曖昧なことが里親委託の進展を疎外している可能性を踏まえるならば、両者の区分けを明確にしているイタリアの事例から学ぶべき点は多いだろう。 第2に、イタリアにおいては、未成年裁判所が子どもの権利の観点から措置委託を決定していることである。司法の責任の下で子どもの処遇を決定するということは、親子の要支援性や、ソーシャルワーカー等の判断に対し、ある種の社会的正当性が与えられるということである。 第3に、イタリアでは、子どもの実親への支援は自治体福祉部局が、里親への支援は里親支援センターが行うよう、明確な役割分担がなされている。里親支援センターの配置状況には地域差があるものの、このように実親への支援役と里親への支援役とを分けていることは、職員に過剰な負担が係ることを防いだり、実親への支援を円滑にする効果があると考えられる。 第4に、国と自治体が密接に連携して、情報の整理に取り組んでいる点である。日本においても全国レベルのデータを整備していくための方法論を模索する必要があるだろう。 日本の児童相談所でのヒアリング調査からは、里親委託推進のためにはさまざまな課題があると職員が考えていることが明らかになった。
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