本研究の一部として、恐怖刺激の知覚に際した感覚野と視床のインタラクションの詳細を、fMRIを用いて検証した。具体的には、恐怖刺激として、学習や進化を通して恐怖との関連性が学習されたと考えられる恐怖表情を用い、恐怖表情が目の前の画面に出現すると予期された際の脳活動のインタラクションを検証した。まずは、一般的な空間解像度(3ミリ)を持つ3T fMRIを用いた予備的検討を重ね、その後、蓄積したノウハウを活用し、高解像度の7T fMRI(0.8ミリ)を用いて検証した。7T fMRIの実験はオランダ・マーストリヒト大学との共同研究として実施し、高い空間解像度を駆使して、感覚野の皮質層ごとの視床とのインタラクションを推定した。また、喜び表情を用いたコントロール実験も実施することにより、恐怖に関わる知覚に特化した処理メカニズムについて言及できる結果を得ることができた。本研究の成果は、これまでに3件の国際学会にて途中経過を発表しており、うち一件では発表賞を受賞した他、現在は国際ジャーナルにて論文の査読中である。
加えて、本研究の一部として、恐怖記憶における嗅覚モダリティの影響についての予備的な検討を実施し、従来は視覚モダリティに限定的であった恐怖記憶形成メカニズムに関して、感覚モダリティを拡張した理解を深めることができた。こうした予備的検討は、本研究代表者の今後の研究活動にさらに繋げていく予定である。
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